【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗

【わが政権構想】日本経済強靭化計画|高市早苗

「安倍さんに『出馬してください!』と何十回お願いしても『100%ない』とおっしゃるので、7月下旬、もうこれが最後との思いで、もう一度お願いしました。そこできっぱり断られたので、『そんなんやったら、私、出たるからな』と安倍さんに言うたんです。止められもせず、勧められもしませんでしたが。勉強会を何度も重ねて、一緒に政策作りにも励んできました。『書き溜めてきた政策はどうすればいいんですか』と安倍さんに尋ねたら、『高市さんが発表すればいいじゃない』と(笑)」(月刊『Hanada』2021年10月号より)。独占無料公開! 高市早苗議員が日本を強くする「経済強靭化計画」のすべてを語った!


半導体分野と産業用ロボット

世界的に不足している「半導体分野」でも、日本は一定の優位性を維持しています。
 
ロジック半導体(演算処理)は、自動車とFA用マイコンについて日本企業の世界シェアを見ると、ルネサスが1位。パワー半導体(電力の制御や供給)の世界シェアは、三菱電機が3位、東芝が5位、富士電機が6位と、複数の日本企業が頑張っている。
 
NANDフラッシュメモリ(データ記録)の世界シェアは、キオクシア(旧東芝メモリ)が2位。CMOSイメージセンサの世界シェアは、ソニーが1位。半導体分野で、日本で作れないのは、シングル・ナノのチップ。世界では、TSMC、サムスン、インテルの3社だけが供給している。

半導体は、パソコン、スマートフォン、IoT、DC/HPC、5Gインフラ、電動車、自動走行、スマートシティ、AI、ロボティクスと、日本と世界の成長を支える製品・サービスに欠かせません。

今後、「設計・製造」はもとより、「設計支援」(回路設計図・電子設計自動化支援ツール)、「製造装置」(成膜・エッチング・露光・塗布・現像・洗浄)、「素材」(シリコンウェハ・レジスト)についても、強いプレイヤーを育成するための支援を行うことが、「危機管理投資」にも「成長投資」にもなるでしょう。
 
また、日本メーカーの「産業用ロボット」は、世界シェアの6割弱を占めている。

世界のロボット4大メーカーは、日本のファナック(シェア1位)と安川電機、スイスのABB、中国のクーカ(ドイツのメーカーを中国が買収)。

世界の産業用ロボット販売台数は、2013年から2017年の5年間で2倍に増加しており、今後も年平均14%増が見込まれています。

産業用ロボットの最大の納入先は自動車産業ですが、電機・電子部品、金属製品、産業機械、家電、物流、航空、宇宙、プラスチック、医薬品、化粧品、食品、農業など、幅広く自動化の展望が開けているので、引き続き成長が期待できる分野です。

順調に見えるロボット分野にも、課題があります。システムインテグレーターの不足です。少人数の個人事業主が多く、資金繰りも厳しい。人材育成と資金繰り支援は、「成長投資」になるはずです。

量子技術、漫画、ゲームも日本の強み

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「マテリアル(工業素材)」も強く、日本の輸出総額のうちマテリアルは自動車と並んで2割を超えています。例えば、「液晶ディスプレイ」に使われるマテリアルについて、日系企業の世界シェアを見てみましょう。

「偏光板保護フィルム」では、富士フイルムやコニカミノルタなどで世界シェアは10割。「ガラス基板」では、AGC(旧旭硝子)や日本電気硝子などで5割。「偏光板」では、日東電工や住友化学などで6割。「ブラックレジスト」では、東京応化、三菱ケミカル、日鉄ケミカル&マテリアルなどで7割。「カラーレジスト」では、JSR、住友化学、トーヨーカラーなどで7割。

モビリティ、エネルギー、デバイス・センサー、食料など、私達の暮らしに欠かせない分野で「マテリアル」の重要技術領域は非常に多いのです。

今後、資源代替・使用量削減・易分別設計など「マテリアルの高度循環のための技術開発」や、MI、計測・分析、スマートラボ、製造プロセス、安全評価技術など「共通基盤技術の開発」を国が支援することは、有効な「成長投資」となります。
 
「量子工学」は、国家安全保障の帰趨を制する技術。欧米や中国は「量子技術」を国家戦略上の重要技術と位置付け、戦略策定、研究開発投資の拡充、拠点形成を急いでいます。   

日本でも安倍内閣が昨年1月に『量子技術イノベーション戦略』を策定した。当時の総務大臣だった私は、「量子セキュリティ技術」の研究開発の中核拠点をNICT(国立研究開発法人 情報通信研究機構)に整備することとし、運営交付金43・9億円を計上しました。

量子技術においても、「基礎理論」や「基盤技術」では、日本が優位性を持っており、欧米からの関心は高い。私は、安全保障の観点から、特に「国産の量子コンピュータ開発」を急ぐ必要があると考えています。

今年、IBMの実機が日本に導入されましたが、私は、理化学研究所、日立、富士通、NECには、十分にハードウェアを開発できる技術と人材があると思っています。しかし、個社の経営陣が巨額の開発費を使うプロジェクトを決断するのは困難でしょう。

スーパーコンピュータ「富岳」の開発も終わり、次の大型国家プロジェクトとして、理化学研究所と企業群を中心に「量子コンピュータ開発機構」を設立し、3年間で3,000億円規模の集中支援を行い、国産の量子コンピュータを開発、社会実装することは、日本が急ぐべき「危機管理投資」だと考えます。

さらに量子技術イノベーションを進め、量子暗号通信、量子計測・センシング、量子マテリアル、量子シミュレーションなどの技術領域を国が支援することは、「成長投資」になる。食品・薬品などの微量異物検知、認知症やうつ病の解明、創薬への活用など、生活を安全で豊かにするのが量子技術です。

「漫画」「アニメ」「ゲーム」も、日本の強みであり、担い手の育成と起業支援の仕組み作りは「成長投資」になる。

先ず、高等教育機関で、著作権や契約などに関する法律教育を行う。次に、外資とのイコールフッティング(競争条件同一化)や海外配信網の整備などを支援する。さらに、資金面では、投資家の税負担軽減策として、「寄付税制」を所得控除から税額控除にする。法人課税の繰り延べ、遺産からの控除、相続課税の繰り延べなどの方法もあります。

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