東京五輪開催は日本にとって最大のチャンスだ|猪瀬直樹

東京五輪開催は日本にとって最大のチャンスだ|猪瀬直樹

「オリンピック出て行け」などと叫んでいる人たちを見ると、まるで鎖国していたころの尊皇攘夷派と一緒だという気がしてならない。 コロナ禍のいまだからこそ、人間の限界に挑戦する選手の活躍から勇気をもらうことが「夢の力」につながる。  


開催中も進むワクチン接種

先述したように、いま日本で新型コロナウイルスの感染状況の客観的な数字を見れば、直近1週間で確認された人口10万人あたりの新規感染者数は10・5人である。IOCが「これなら開催できる」という判断を下して当然だ。  

加えて、いまワクチン接種も進んでおり、東京五輪が開催される7月23日までの間にも、高齢者や医療関係者を含めて約4000万人、国民の3分の1が接種を終え、警察や消防関係者も接種が進むなど実績は相当な伸びを示す。パラリンピックが閉幕するのは9月5日で、五輪の開催中もワクチンの接種は当然続けられる。  

接種が進めば、現場の医療関係者だけでなく住民側も、手順に慣れていく。日本国民が落ちつきを取り戻すのは、そう先ではないだろう。「新型コロナウイルスはワクチンで封じ込めることができる」という安心感を日本人が持つようになれば、五輪開催に理解を示す世論も増加する。

日本が世界を積極的にリードする

悲観論を唱える人は「何もやらない」ということを言っているのだが、もっと、どうやって実現するかという前向きな発想を持つべきだ。  

開催するにはたしかに困難はある。しかし、これはある種の“目標管理”であり、前向きな意欲を見せ、そして困難を乗り越えてやりきるというのが、国際社会に対する我々の信頼の勝ち取り方ではないだろうか。  

日本がこの状況下で東京五輪を開催できれば、コロナと戦っている世界中の人々に勇気を与える。東京がコロナをどう克服するのか、それを見せることによって、日本が世界の流れを積極的にリードしていくということにもなる。  

どう困難を乗り越えていくかを考えるのが大事であって、ただ気分で反対と言うのではなく、どうすれば希望のある世界を作れるのか、対案を示すべきだ。「コロナ禍だからやれない」というのではなくて、「コロナ禍でもやれる」組織力を示し、そして開催した証拠を残す。ピンチはチャンスでもある。  我々が招致する時に“おもてなし”と言ったことを想い出してほしい。  

たとえば、僕は招致のプレゼンテーションでこう述べた。 「東京マラソンでは都庁の前に集まった3万5000人が服を着替えるが、脱いだ服が1万人のボランティアによって間違いなくゴールのビッグサイトに戻ってくる。そういう一流ホテルのクロークでも難しいことを日本人はやれる」  

電車が分刻みで正確に運行されていることも説明した。いまのコロナ対策にしても、どの店や施設に入ってもアルコール消毒器や体温計が設置されている国は日本ぐらいだろう。  

東京五輪開催は世界に日本をアピールするチャンスとなる。反対派は、なぜもっと前向きに考え行動しないのか。今回もみんなが頑張ればできると考えて実行すべきだ。  

五輪をテレビ観戦した人らが東京にインバウンドで戻ってきて、観光業を潤すことになる。もし新型コロナでできなかったとなれば、インバウンドはもはや戻ってこない。これも日本にとって重大な問題である。  

立憲民主党や共産党なども「反対」を表明しているが、朝日と同じく単なる倒閣運動の一環でやっているだけで、インバウンドの重大な問題など、これからの国家設計にかかわることが全く見えていない。いつまでたっても政権与党になれない人たちの発想、目先の戦術だけで動いており論外だ。

東京五輪を招致した理念

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