国基研では、このIEA報告書に関連して、①鉱物資源を従来の世界生産量の数十倍確保できるのか②再エネを推進すると、使用済み製品の廃棄によっても環境が深刻に汚染される懸念がある③コンゴの児童雇用だけでなく、中国当局によるウイグル人の強制労働が再エネ製品製造に利用されており、これを許して良いのか―といった議論があった。
水資源に関して言えば、我が国の湖周辺の土地が中国資本に買いまくられている。中国は精錬に必要な水を持ち出そうとしている可能性もあり、このままでは日本は、太陽光パネル、風力発電、蓄電池、電気自動車、原発の分野で圧倒的シェアを持つ中国製品の輸入国に陥る。これらの製品はかつて日本が世界一の技術力を誇っていた。
2020年の世界のプラグインハイブリッドを含む電気自動車生産台数で、日本のメーカーは全てベスト10圏外に落ち、中国が急伸している。我が国が競争力を回復するには、安定で低廉な電気が必要である。我が国が鉱物資源の制約と環境汚染を回避するには、何度も言うようだが「原発のリプレース・新増設」が最も効果的だ。(2021.06.21国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
国基研理事、東京工業大特任教授。1952年、東京都生まれ。東京工業大理工学研究科原子核工学修士課程修了。専門は原子炉工学。東芝に入社し原子力の安全性に関する研究に従事。同社電力・産業システム技術開発センター主幹などを務め、2007年に北海道大大学院教授に就任。同大大学院名誉教授・特任教授を経て現職。