英国の太平洋戦略に中国の焦り|湯浅博

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米中間の地政学的な競争が激しさを増す中、英国が経済と安全保障の両面からインド太平洋への関与を強める動きは、独裁国家・中国の危険性に気づき始めた他の欧州主要国をこの地域に誘い込む大きな力となる。


中国国営新華社通信によると、習近平国家主席は5月31日の中国共産党の会議で、「信頼され、愛され、敬われる中国のイメージをつくるよう努力すべし」と指示した。これまでの強気の「戦狼外交」が裏目に出て、日米欧の対中警戒を高めたことを憂慮しているのだ。外交の手法より国内の人権抑圧と対外的な拡張主義を改めるべきだと思うが、方針転換を迫られたのは身から出た錆(さび)というものだ。(2021.06.07国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

湯浅博

https://hanada-plus.jp/articles/401

産経新聞客員論説委員、国家基本問題研究所主任研究員。1948年、東京都生まれ。中央大学法学部卒、プリントン大学公共政策大学院Mid‐Career Fellow program修了。産経新聞入社後に政治部、経済部を経てワシントン特派員、外信部次長、ワシントン支局長、シンガポール支局長、特別記者・論説委員を歴任。2018年6月から現職。著書に『全体主義と闘った男 河合栄治郎』、『中国が支配する世界 パクス・シニカへの未来年表』など多数。

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