そこで今回の改正案では、一部に見られる難民申請の乱用による送還忌避を減らすために3回目の申請中から送還を実施できるようにし、逃亡者防止のため罰則を新設した。その一方、難民資格は認められないが人道的理由がある者を「補完的保護対象者」として在留を認める制度を新設するなど、人権にも配慮した。
難民認定される比率が欧米に比べて低いという批判に対しては、陸続きで外国と接する国との事情の違いがあり、一概に日本が非人道的だとは言えない。すでに法相の裁量で与えられる特別在留許可による人道的配慮は行われており、令和元年には退去強制に異議を申し出た者の6割強、1448件が特別在留を認められている。センセーショナルに報じられている収容所内で病死したスリランカ女性は、留学ビザで入国して学費を滞納し、在留資格を喪失して不法滞在になったケースで、難民申請者ではない。(2021.05.17国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授。1956年、東京生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究科修了(国際学修士)。韓国・延世大学国際学科留学。82〜84年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。90〜02年、月刊『現代コリア』編集長。05年、正論大賞受賞。17年3月末まで、東京基督教大学教授。同4月から、麗澤大学客員教授・モラロジー研究所「歴史研究室」室長。著書に『でっちあげの徴用工問題 』など多数。