ミャンマーを加えよと主張したのは立憲民主党だが、受け入れたのは自民、公明の与党だ。受け入れ理由として彼らはまたもや、全会一致を宗(むね)とする国会決議の伝統を持ち出すのだ。旧来の陋(ろう)習が大事な価値観を阻むのであれば、そんなものは破り捨てよと教えた五箇条の御誓文を想い出すべきだろう。情けないのは中身の薄いこの案でさえ、いつ決議されるか、未定であることだ。
厳しい価値観の対立の中にある国際社会で日本の進む道は明らかだ。まず普遍的価値観を高く掲げる。次に軍事力行使において限界多くして機能しない憲法の改正手続きを進めることだ。その前に日本の価値観を表明し、中国政府に抗議することが欠かせない。それができないのであれば、立法府議員の存在価値は無きに等しい。(2021.05.10国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
国家基本問題研究所理事長。ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスター等を経て、フリー・ジャーナリストとして活躍。『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『日本の危機』(新潮文庫)を軸とする言論活動で菊池寛賞を受賞。2007年に国家基本問題研究所(国基研)を設立し理事長に就任。2010年、正論大賞を受賞。著書に『何があっても大丈夫』『日本の未来』『一刀両断』『問答無用』(新潮社)『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)『チベット 自由への闘い』(PHP新書)『朝日リスク』(共著・産経新聞出版)など多数。