日本の大学45校が中国「国防七大学」と協定|長尾たかし

日本の大学45校が中国「国防七大学」と協定|長尾たかし

日本の国公私立大学計45校が、中国人民解放軍と関係が深く、軍事関連技術研究を行う国防七大学と大学間交流協定を結んでおり、うち9校は共同研究の実績があるという。懸念される技術流出と軍事転用。スパイ防止法がない日本の危機だ!


中国国内の一般大学に協力を要請し、海外の大学に学生を留学させて情報や研究成果を取ってきてもらい、それによって中国が軍事的に優位に立つぞ、と宣言しているのです。  

今回の件は、「学問の自由」にかかわる話ではありません。経済安全保障の問題です。経済安全保障とは、経済と国家の安全保障をこれまで以上に強く結びつけて、それを守る考えのことです。この言葉は2年ほど前までは今日ほど当たり前に使われていない概念でしたが、トランプ大統領による国防権限法からクローズアップされ、いまでは大きな焦点になっています。

中国という特定の名前を出したくない議員への配慮か

しかしながら、日本には機密を盗んでも罰するスパイ防止法がなく、現状対応できる法律は外国為替管理法だけです。「規制対象貨物を輸出しようとした際」 「規制対象技術を提供しようとする際」に、外為法に基づき経産大臣の許可の取得が必要になり、それを破っているかどうかであって、それ以外には禁止する枠組みがありません。つまり、留学生がスパイ行為を働いたとしても、それを取り締まる法律がないのです。  

もちろん大学側も留学生の入学希望の申請書を作成し、危うい人物がいないかを精査していますが、しかしそもそもそこにを書かれてしまえば確かめようがなく、また嘘だと判明してもスパイ防止法がないため大学の判断に委ねられる。  

私が副代表をしている「日本の尊厳と国益を護る会」では、スパイ防止法の必要性を議論しています。「妙な一部の国民感情」に配慮するならば、「スパイ」という言葉を別の言葉に替えてもいい。とにかく、知的財産、機微技術の流出を防止する法律が必要です。逆に言えば、いまは絶好の機会とも言えるわけです。  

自民党政調会で立ち上がった甘利明先生が座長を務める「新国際秩序創造戦略本部」では、経済安全保障の議論を進めています。ただ不思議なことに、米中貿易問題に触れたり、サプライチェーンの再構築から特定の国家に依存しないようにするために云々という話にはなるのですが、中国や国防動員法、中華人民共和国サイバーセキュリティ法など、考慮すべき中国という特定国家の脅威についての具体的な固有名詞を使っての議論にたどり着かない。  

中国という特定の名前を出したくない方々への配慮なのでしょうか?  しかし、経済安全保障での一番のネックが中国であることは共通認識のはずです。何も全面的に対決せよと言いたいのではありませんが、具体的な国や法律が対象になってこそ、具体的な対応策を考えられるはず。もう少し議論を進めるためにも、早々に特定的議論をしてほしいと思わずにはいられません。

米国企業との取引を打ち切られるリスク

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