バイデン大統領は「もう一度、お互いの声を聞くことを始めよう」と呼び掛けた。先の大戦後に日本を占領した連合国軍総司令部(GHQ)が繰り返し説いた民主主義のABCだ。米国内の世論の分裂は過去にあまり例を見ないほど大きいが、これは何もトランプ前大統領がつくり出したものではない。米国全体の相対的衰退の中で生まれ、左右両勢力とも冷静に相手の意見を聴こうとしない。これが極端なグループの跳梁(ちょうりょう)を許している。
就任演説は同盟関係の修復に触れている。トランプ政権の4年間に日米関係は良好だったが、むしろ修復が必要なのは日本側だろう。警察、消防の担当分野を自衛隊が過度にカバーする例が増えている。これでは自衛隊は災害救助隊になってしまう。自衛隊に国軍の名誉を与えることが最良の日米関係を生む時代に入っているのだ。(国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
国家基本問題研究所副理事長。1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、時事通信社に入社。ハンブルグ特派員、那覇支局長、ワシントン支局長、外信部長などを務める。1992年から杏林大学で教鞭を執る。法学博士。杏林大学名誉教授。専門は国際政治。国家基本問題研究所副理事長。美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表。著書に『戦略家ニクソン』『激流世界を生きて』『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』など多数。