屈辱の拘束・拷問体験記
劉勝徳氏がまとめた「拘束・拷問体験記」(撮影/筆者)
「男たちは、国家安全部所属を名乗り、『スパイ容疑で拘束600日』と告げ、以後私は24時間彼らの監視下におかれた」 「銃殺刑とか、拘束10年もあり得るなどと脅されたうえに、連日連夜の取り調べ。かつての王毅元駐日大使(現国務委員兼外相)との関係や、王毅氏が岡山講演で語った内容などを繰り返し聞かれたあげく、ポリグラフ検査(うそ発見器)にまでかけられた。彼らの真の狙いは王毅氏だった」 「完全に先入観と思い込みによる勇み足の身柄拘束。中国国内の権力闘争に巻き込まれたとしか思えない」──。
出張先の中国蘇州市内で2016年11月に拘束され、4カ月間、中国国家安全部(省)から拷問に等しい取り調べを受けた岡山県華僑華人総会(岡山市北区)の劉勝徳会長(74)が、その“屈辱の拘束・拷問体験記”をこのほど筆者に示し、インタビューに応じた。その仰天証言の数々を初公開する。
約4カ月間にわたる厳しい尋問
劉氏は昭和21年、島根県出雲市生まれの在日華僑2世。父親は福建省出身で、家業の衣料品店は継がず、長年、中国公館とも連携して在日華僑・華人、中国人留学生の地位向上や生活、学業支援、日中友好行事や交流促進行事などに尽力した筋金入りの華僑活動家だ。30代で岡山に出て中華料理店の支配人を務め、その後、本国の支援も得て独立を果たし、一時は地元で名の通った中華料理店「天安門」の経営者となった立志伝中の老華僑で、西日本華僑・華人社会の重鎮としても知られている。
2016年11月22日、劉氏は、通訳の中国人男性と一緒に蘇州市内で身柄を確保され、約1カ月後に天津に移送。翌17年3月17日まで、計約4カ月間にわたって厳しい尋問を受けた。岡山市の自宅に帰還を果たした直後、その“屈辱体験”の備忘録として「岡山県華僑華人総会 業務訪中時 身柄拘束事件」との表題で、A4判用紙11枚分の“拘束・拷問体験記”を日本語で一気に書き上げたという。