慰安婦問題に関連した国連クマラスワ報告書に対する反論|眞明行

慰安婦問題に関連した国連クマラスワ報告書に対する反論|眞明行

韓国の日韓友好市民団体「反日銅像真相究明共同対策委員会」と、韓国の代表的な実証歴史論客「真明行の歴史チャンネル」が共同で作成した国連クマラスワ報告書に対する大反論。


(a)韓国では1992年、金学順の慰安婦被害証言を皮切りに慰安婦問題が国家的な論点となった。その後、彼女たちを支援する団体が生まれ、これらの団体が現在は政界と繋がりを持つ巨大な権力になっている。

(b)最初の証言者、金学順は日本軍によって強制的に慰安婦にされたように韓国で知られているが、実際は母親が彼女を妓生として売り、再度、養父によって中国に売られた、家族間の人身売買の典型である。

(c)これは、この時代の下層民の貧しさと家庭解体の結果であり、慰安婦が軍隊によって導入される以前から韓国社会に蔓延した人身売買と誘拐、略取とも関係がある。ただ主体が民間人か軍人かの違いに過ぎない。

(d)こうした社会的背景を度外視して、遊郭に売られたり詐欺によって売春に関わった様相を軍慰安婦に限定して考察すれば、その当時、女性たちが受けていた被害について合理的な考察が不可能になるだろう。

(e) 金学順の事例で見るように、慰安婦の証言は時期別に内容が異なり、自発的や就業詐欺によって募集に応じたことは否定され、日本軍や警察が介入したような歪曲が生じるようになった。証言はこうした記憶の間違いや歪曲を常に前提に置かねばならず、徹底的に検証すべきである。

3. クマラスワミ報告書の歪曲された根拠

(1)クマラスワミ報告書で根拠にした資料は、相当数が歪曲された証言に基づいている。

その実例が報告書21番パラグラフで言及されたミクロネシアでの慰安婦虐殺、27番と28番パラグラフでの吉田清治の証言に登場する奴隷狩り、16番パラグラフの慰安婦・呂福実の証言、54番パラグラフの慰安婦・鄭玉淳の証言、55番パラグラフの黄ソギュンの証言、56番パラグラフの黄錦周の証言が代表的な事例として議論できるだろう。

(2)報告書21番パラグラフ‘ミクロネシアでの慰安婦70名虐殺’

この報告書が採択されると、日本国内の多くの学者によって問題を指摘された部分である。この部分はジョージ ヒックス(George Hicks)の『慰安婦:日本帝国の性奴隷(The comfort women:sex slaves of the Japanese imperial forces)』(1995年)に基づいたもので、70人という数字は創作されたものであることが明らかになった。この本で引用されている金一勉の『天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦』(1976年)にも70人という数字はない。秦郁彦教授の研究によればこの主張の起源は西口克己の1969年の小説『廓』に出てくる内容で日本軍がミクロネシアのトラック島,(chuuk Islands)で慰安婦を機関銃で撲殺したというものだ。こうした内容が国連報告書に載ったことは、国連の権威を失墜させることであり恥ずべき部分だ。

ジョージ ヒックス(George Hicks)の「慰安婦:日本帝国の性奴隷(The comfort women:sex slaves of the Japanese imperial forces)」(1995年)

(3)報告書27番、28番パラグラフ「吉田清治回顧録の奴隷狩り」

報告書は、大規模の強制的で暴力的な女性拉致が存在し、奴隷狩りの方法が用いられたと記述した。その根拠は1996年の吉田清治の回顧録である。この回顧録は日本国内の学者たちの徹底した検証によって虚偽であることが判明し、吉田清治が偽りであることを白状して、2014年度にこれを報道した朝日新聞で間違いであることを公式的に認めたことがある。報告書はこのように公式文献と資料が不在の状況で検証されない証言や回顧に依存することで被害事実を誇張し、水増しに集中している。

(3) 報告書16番パラグラフ「呂福実の証言」

報告書は16項目で女子挺身隊と慰安婦を無理に関連させる誤謬に陥っている。挺身隊は一定の学歴と基準を持つ女性で、短期間勤務に動員されたが、慰安婦被害者たちは大部分無学、妓生、家政婦、料理屋で生計を立てていた女性で、挺身隊徴用対象とは距離がある。

また慰安婦として連行される前、軍人たちが父母の前で強姦したとか、抵抗する父母を暴力で制圧したということは証言による一方的な陳述で、記憶の歪曲または嘘や誇張であり得ることを全く勘案しない無理な断定だ。

この実例で呂福実は日本人巡査と軍人4、5人が押し入って銃剣で脅し、抵抗する父親を制圧した後、連行されたと証言しているが、この日本人は創氏改名をした朝鮮人巡査、田中だと言っている。周知の通り、創氏改名は1939年11月に朝鮮民事令が改定され、1940年2月から受付が始まったことで、呂福実が拉致されたと主張する時点に創氏名田中という巡査が存在する可能性はない。

呂福実が天津から脱出する契機も挺対協の証言集では中国人通訳官の助けを得て秘密裏に脱出したとして出てくるが、1992年1月18日付国民日報インタビューを見ると、天津地域に公娼が入って、慰安所から解放され、中国現地をさまよったが朝鮮人通訳団の助けで帰国したと出ている。挺対協の証言採録と国民日報のインタビューはほぼ同じ時期に出たことで、証言内容が大きな差異を見せたのは証言を証拠にするには信憑性に問題があることを意味する。

(4) 報告54番パラグラフ「鄭玉順の証言」

報告書は北朝鮮に居住している慰安婦の証言を集中的に採択している。呂福実、鄭玉順、黄ソギュンであり、韓国内慰安婦は黄錦周一人だけだ。クマラスワミが北朝鮮出身慰安婦の証言に集中している理由は、その証言内容が残忍この上なく、ショッキングで、グロテスクで、劇的な効果を与えるためだ。しかし、北朝鮮の慰安婦たちは証言内容がほとんど官製証言である場合が多い。歴史的実体と常識に符合しない内容も多い。報告者はこうしたとんでもない証言に対して全く疑わず、そのまま受容した誤謬がある。

鄭玉順の例を見る。鄭玉順は食事を作るため井戸端に行ったところ、いきなり軍人たちによって拉致された後、警察署に連れて行かれ集団輪姦され、再度、軍部隊に移送され性暴行されたと証言している。だが、鄭玉順の証言は実体がなく創作した証言である。拉致された後連れて行かれたという警察署は豊山郡警察署を意味する。ところが、この警察署には朝鮮人出身警官が3:1程度で少し多い。そうしたところで集団輪姦が可能だったのだろうか。

時期も問題だ。拉致されたと主張する1933年は戦争前で朝鮮内に民間遊郭が多かったが軍慰安所は存在しなかった。彼女が恵山鎮守備隊に移送され慰安婦生活をしたと証言した内容には様々な点で矛盾がある。

まず規模の問題だ。400人の朝鮮人慰安婦が日本軍5,000人を相手にしたと陳述した内容は間違いだ。その当時、恵山鎮には日本19師団下の第74連隊所属第4守備隊から派遣された恵山鎮守備隊1中隊と2中隊があるだけだ。昭和10年4月30日に調査された第4守備隊編成装備一覧表によれば、恵山鎮守備隊は1中隊149名、2中隊121名合わせて270名であり、本部人員は6名で恵山鎮守備隊には276名が編成されていた。恵山鎮と少し離れた新乫坡鎭守備隊46名まで全て合わせても第4守備隊現員は329名に過ぎない。

次に、登場人物の加工だ。連れて来られた慰安婦のうち反抗する者がいると、日本人中隊長山本は首を叩けと命令したという陳述だ。だが、昭和7年に調査した恵山鎮守備隊の将校名簿をみると、山本という将校はいない。(第4守備隊長常磐井孝純中佐、恵山鎮第1守備隊長羽生善良大尉、第2守備隊長甲斐厚大尉)

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