著者のクライブ・ハミルトン氏は序文で、「中国の目に見えぬ侵略」を徹底的に調べようと決心したきっかけを書いている。
それは、2008年4月24日に首都キャンベラで北京五輪聖火リレーが開催された時、何万人もの中国人が現場に集まり、抗議するチベット人たちを威嚇した場面を著者は目撃し、それに恐怖を覚えたからだという。
これを読んで私が真っ先に思い出したのは、これと同じ恐ろしい場面が日本でもあったことだ。そう、2008年4月26日、同じ北京五輪の聖火リレーが長野市の中心部で催された時、チベット人の抗議者と日本人のチベット支援者を妨害するために、数千人の中国人が五星紅旗を振りかざして暴言を吐いて、暴力を振るったという大騒動だ。
あれから12年、この騒動(事件)のことはすでに忘れられているようだ。だが、この12年間で、中国による日本の乗っ取り、侵略はかなり進んできているのではないか。
日本で進んでいるはずの中国の「目に見えぬ侵略」に対し、われわれ日本国民は、もっと大きな危機感をもって真剣に考えるべきではないのか。そして、日本という国とわれわれの子孫のために、いますぐにでも反撃の狼煙を上げていくべきではないか。(初出:月刊『Hanada』2020年9月号)
