我が国の太陽光パネルは今年度末に原発63基相当の発電設備となるが、年間の発電シェアは8%しかない。電気の消費者が毎月の電気代に加えて払っている再エネ発電促進賦課金から、事業用の太陽光発電の契約期間である20年間で総額60兆円が太陽光発電会社に支払われる見込みである。仮に水力とバイオマス(木材、パーム油など)で20%、変動再エネで80%の電力を供給すると仮定すると、今の10倍の600兆円が必要となる。更に余剰な昼間の電力を蓄える設備が必要で、これにも別に400兆円かかる。つまり、計1000兆円の投資が必要で、これは日本の国家予算の10年分に相当する。
このような高額投資はかなり困難だから、「安全性最優先で原子力を使う」という政策にならざるを得ない。そして車も電気自動車か水素を使う燃料電池車とし、製鉄も電炉とコークスの代わりに水素を使う製鉄にして、初めてCO2の排出ゼロが実現する。(2020.11.05国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
国基研理事、東京工業大特任教授。1952年、東京都生まれ。東京工業大理工学研究科原子核工学修士課程修了。専門は原子炉工学。東芝に入社し原子力の安全性に関する研究に従事。同社電力・産業システム技術開発センター主幹などを務め、2007年に北海道大大学院教授に就任。同大大学院名誉教授・特任教授を経て現職。