中国の攻撃性が「クアッド・プラス」を動かす|湯浅博

中国の攻撃性が「クアッド・プラス」を動かす|湯浅博

中国の最大の懸念は、クアッドが拡大してNATOのような「締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」という「ハード・アライアンス」(強固な軍事同盟)に変貌し、中国包囲網がつくられることである。


菅義偉首相の先週の東南アジア訪問は、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の修辞に貫かれていた。菅首相は安倍晋三前首相が敷いたレールの上で、日米豪印4カ国安全保障対話(クアッド)を動かし、初外遊によって東南アジア諸国連合(ASEAN)中核国との連携を強化した。中国の習近平政権が周辺国への露骨な圧力外交をやめない限り、4カ国以外にも枠組みを広げて「ソフト・アライアンス」(柔軟な同盟)への道を探ることになる。

Getty logo

菅首相の東南ア訪問で連携強化

菅首相は安倍前首相のような華こそないが、初外遊を堅実にこなした。現在のASEAN議長国ベトナム、東南アジアの盟主インドネシアの両国訪問は、今月初めに東京で開催された日米豪印外相会議を受ける絶好のタイミングで行われた。中国の王毅外相は13日、訪問先のマレーシアで、日米豪印の動きを「インド太平洋版のNATO(北大西洋条約機構)を構築する企て」と非難のトーンを上げた。菅首相のベトナム、インドネシア訪問を控えて、ASEANが「クアッド・プラス」に取り込まれないようクギを刺したつもりなのだろう。

中国の最大の懸念は、クアッドが拡大してNATOのような「締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす」という「ハード・アライアンス」(強固な軍事同盟)に変貌し、中国包囲網がつくられることである。実際には、菅首相が今回の2カ国訪問で強調したのは、二つの大洋にまたがる広大な地域で、法の支配、主権の尊重、自由市場など共通の価値観に基づく緩やかな連携と繁栄を追求しようとするものだ。

それはASEANが昨年6月、安倍前首相のインド太平洋構想にある「自由」を「包摂的」に置き換え、より緩やかな「インド太平洋概観」を打ち出したことへの配慮かもしれない。日本とASEANの構想を束ね、同じ方向に導く必要がある。その作業は、鋭角的な米国流の発想では難しく、ASEANと長年接してきた日本の役割である。

菅首相はハノイ演説で、二つの構想には共通項があると称賛し、「南シナ海でASEAN構想にある法の支配に逆行する動きが起きている。緊張を高めるいかなる行為にも反対する」と述べ、国際ルールを無視する中国を強くけん制した。そのうえで、防衛装備品の技術移転を認め、医療物資などのサプライチェーンの強化による相互補完で合意した。

米は「柔軟な同盟」探る

関連する投稿


林真理子さんが感服! 村西とおる「有名人の人生相談『人間だもの』」

林真理子さんが感服! 村西とおる「有名人の人生相談『人間だもの』」

「捨て身で生きよう、と思える一冊。私の心も裸にされたくなりました」(脚本家・大石静さん)。「非常にいい本ですね、ステキ」(漫画家・内田春菊さん)。そして村西とおる監督の「人生相談『人間だもの』」を愛する方がもうひとり。作家の林真理子さんです。「私はつくづく感服してしまった」。その理由とは?


美しい日本の姿を国葬で示そう|櫻井よしこ

美しい日本の姿を国葬で示そう|櫻井よしこ

肉体は滅びても死者の魂は日本国の空、深い森や清らかな水辺のどこかにいらして、生者である私たちと日本国を見守って下さっている、と信じている。日本国のために闘い続けた安倍氏への深い感謝を国民こぞって静かに捧げる美しい日本の姿を国葬儀で世界に示そう。


日米共同演習でロシアを牽制せよ|岩田清文

日米共同演習でロシアを牽制せよ|岩田清文

今、米国が最も神経を使っているのは、今後、ウクライナの反撃が進展し、東部2州あるいは、クリミアまでをも奪還できる状況になった時、それをどこまで許容するかという点であろう。


数字合わせの防衛費で防衛力強化はできない|織田邦男

数字合わせの防衛費で防衛力強化はできない|織田邦男

言葉は美しい。だが、防衛省単独の予算を積み上げるより、他省庁の経費も含めた方が本来の防衛予算を抑えつつ「GDP比2%」を達成しやすくなるという思惑がみえみえである。


北朝鮮の対露支援の内幕|西岡力

北朝鮮の対露支援の内幕|西岡力

特殊部隊を労働者に偽装してドンバス(東部2州)に派遣して復興工事にあたらせ、場合によっては戦闘参加もさせる―金正恩が指示したロシア政府への提案の具体的な中身とは。


最新の投稿


林真理子さんが感服! 村西とおる「有名人の人生相談『人間だもの』」

林真理子さんが感服! 村西とおる「有名人の人生相談『人間だもの』」

「捨て身で生きよう、と思える一冊。私の心も裸にされたくなりました」(脚本家・大石静さん)。「非常にいい本ですね、ステキ」(漫画家・内田春菊さん)。そして村西とおる監督の「人生相談『人間だもの』」を愛する方がもうひとり。作家の林真理子さんです。「私はつくづく感服してしまった」。その理由とは?


美しい日本の姿を国葬で示そう|櫻井よしこ

美しい日本の姿を国葬で示そう|櫻井よしこ

肉体は滅びても死者の魂は日本国の空、深い森や清らかな水辺のどこかにいらして、生者である私たちと日本国を見守って下さっている、と信じている。日本国のために闘い続けた安倍氏への深い感謝を国民こぞって静かに捧げる美しい日本の姿を国葬儀で世界に示そう。


日中国交正常化50年 中国の横暴を防ぐ出発点に!|和田政宗

日中国交正常化50年 中国の横暴を防ぐ出発点に!|和田政宗

「中国は低姿勢だったが、50年たったら態度はガラッと変わる。大きく経済発展して日本を見下すようになるよ」(時事通信)。当時の大平正芳外務大臣の予言だが、まさにその通りの状況になった。今こそ国交正常化以降の50年を、中国対応を誤った50年として反省すべきだ。


【日本原論】サタンに敗けない![冒頭先行公開]

【日本原論】サタンに敗けない![冒頭先行公開]

旧統一教会を巡る問題について、「サンデージャポン」での「爆笑問題」の太田光の発言がまたもや炎上。「#太田光をテレビに出すな」がTwitterでトレンド入りまでした。太田光は何を思う……本誌人気連載「日本原論」で大いに語った!


「ケツ舐め記者」と誹謗する金平茂紀の正体|山口敬之【WEB連載第17回】

「ケツ舐め記者」と誹謗する金平茂紀の正体|山口敬之【WEB連載第17回】

9月17日、金平茂紀氏はFacebookにこう投稿した。《この国にも「ケツ舐め記者」という連中が少なからず棲息していて、権力者、独裁者、ご主人様の局所を舐めて、その対価として「ご褒美」をもらって、それを得意げに広報し、「独自」「スクープ」とかのワッペンを自分で貼りつけて(中略)男性にも女性にも、もちろんいます、「ケツ舐め記者」は》。金平氏は、一体何様のつもりなのか。