強きに弱く、弱きに強い習性
世界各国がコロナ禍の原因究明を求めると、ウイルスを世界中にばら撒いた中国は今度、必死になって責任逃れを図ろうとしている。そのなかでは、たとえば原因と責任の究明を強く主張するオーストラリアに対しては、中国政府が同国から輸入する大麦に法外な追加関税を発動したり、中国国民にオーストラリア旅行の自粛を呼びかけるなど、全く理不尽な報復措置に打って出るのである。その横暴さは目に余るが、一方、オーストラリア以上に中国に対する責任追及を強く主張するアメリカに対しては、決して同様な報復措置を取らない。強きに弱く弱きに強いというのは、まさに中国政府の一貫した習性である。
そして、コロナ禍の混乱に乗じた形で、中国政府はより一層の弱者いじめを始めた。5月下旬に開かれた全人代で、習近平政権が「国家安全法」という悪法を香港に押し付ける暴挙に出たのである。この悪法が実施された暁には、香港の人権と自由は完全に奪われて、700万人以上の香港市民は中共政権の俎板の鯉となる。国際社会は到底それを許すことなどできない。
世界一の巨悪
このようにして、コロナウイルスの感染拡大以来の半年足らずの間に、すでに中国政府は数え切れないほどの悪行を重ねてきている。これらを一目見ただけで、中国という国はまさに世界一の巨悪であることがよくわかるであろう。彼らは自らに落ち度があっても一向に謝らないし、罪を犯してもそれを絶対認めない。悪いのは他国であって、自分たちはちっとも悪くないと常に思っている。放火も火事場泥棒も平気な顔でやるが、自分たちへの責任追及は一切許さない。そしていつでもどこまでも、弱い国や人々をつかまえて思う存分いじめるのである。
そんな国のことを「ヤクザ国家」と呼びたいところだが、考えてみれば日本のヤクザでさえ、それほど卑怯でもなければそこまで堕落しているわけではないだろう。習近平の中国はもはや、「ヤクザのなかのチンピラ」と化しているのである。図体こそでかいが、心と頭はまさしくチンピラ、実に厄介な存在である。
不幸にも、このように厄介な「チンピラ国家」を隣国に持ったのはわれら日本国である。このような国にどう対処していくのかは常にわれわれにとって頭痛のタネであり、避けては通れない重要な課題であろう。
だからこそ月刊『Hanada』8月号から始まる私の連載は、中国に対処するための参考となる中国論や日本論を柱の一つとして展開していきたい。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」である。(初出:月刊『Hanada』8月号)