絶対、総理にしてはいけないざんねんな石破茂|阿比留瑠比

絶対、総理にしてはいけないざんねんな石破茂|阿比留瑠比

共同通信の世論調査「次期首相に『誰がふさわしいか』」のトップは石破茂自民党元幹事長で34.3%。しかし石破氏がどんな政治家なのか、本当に理解している人は少ないのでは? 産経新聞社政治部編集委員の阿比留瑠比氏が見た「絶対に総理にしてはいけない」石破茂氏の本当の姿と「後出しじゃんけん」の歴史。(初出:月刊『Hanada』2020年6月号)


Getty logo

ところが、石破氏は小泉純一郎内閣の防衛庁長官(当時)に抜擢されると、拉致問題から手を引いていく。防衛庁長官就任直後には、筆者に「拉致議連会長だったということで、福田康夫官房長官に怖い人かと思われていた。腫れ物に触るようだったよ」と苦笑していたが、のちには取り込まれていく。

「福田さんは、私の父が元建設官僚で鳥取県知事の石破二朗だと知ると、『なんだ、君は官僚の息子か』と打ち解けてきた」

石破氏は2014年9月の安倍首相による内閣改造の際には、首相とは集団的自衛権を含む安全保障政策に関する考え方が違う、と打診された安全保障法制担当相を固辞した。

一見筋が通っていそうだが、北朝鮮に宥和的で安保政策には関心が薄く理解もない福田に、簡単に籠絡されたのだった。

石破氏は拉致議連会長就任時には、筆者のインタビューに次のように答えていた。

「とにかく行動すること、北朝鮮に毅然たる姿勢で臨むことの二点に議連の意味がある。日本はこれまで、コメ支援や朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)への援助など、太陽政策的な措置を何度もとってきた。それなのに北朝鮮は、『行方不明者(拉致犠牲者)は捜したがいなかった』と非常に不誠実な答えを返し、ミサイルを撃ち、工作船を航行させるという行動に出ている」

「この問題を歴史認識や戦後補償と絡める人もいるが、拉致犠牲者の返還要求とは全く別問題であり、切り離すべきだ。拉致容疑は人権問題でもあるが、それ以前に国家主権の侵害だ」

「日本の被害を国際社会に認知させないといけない。そして、北朝鮮に『国際社会は敵に回せない』 『拉致犠牲者を帰さないとわが国は立ち行かない』と理解させることが必要だ。北朝鮮の暴発を恐れる向きもあるが、日本にすきがあり、成算があるからこそ暴発する。暴発しても何も得られないと思わせる国家態勢を作っていかなければならない」

それこそ正論である。ところが石破氏は変節していき、2018年6月には、北朝鮮に宥和的で拉致被害者家族から警戒されている日朝国交正常化推進議員連盟(衛藤征士郎会長)の会合に姿を現すまでになった。

自衛官からの拒否反応

拉致問題に関する考え方がいつ、どのようなことがきっかけで変わったのか。寡聞にして石破氏が説明したという話を知らない。拉致被害者家族から信用されないのも当然だと言えよう。

また、石破氏が得意分野である国防を担う自衛官たちに、あまりに人望がない点も気にかかる。筆者は多数の幹部自衛官や自衛官OBから、石破氏を忌避する言葉を聞いた。元自衛官トップの一人はこう吐き捨てた。

「石破さんは肝心なときに逃げる。防衛相時代は、部下をかばわず責任を押し付けた。自衛官は彼を信用していない」

不信の背景の一つは、2008年2月に起きた海上自衛隊のイージス艦と漁船との衝突事故である。このとき、防衛相だった石破氏は、事故の責任が自衛艦と漁船のどちらにあるかも判明していないにもかかわらず、漁船が所属する漁協や遺族宅を訪れ、直接謝罪を行った。

一方で、当時の海上幕僚長らを更迭するなど自衛隊側に厳しい処分を下したが、結局、業務上過失致死罪などで起訴された当直の水雷長と航海長は、無罪判決が確定している。

守ってくれるはずの親分に、身に覚えのない処分をされたり、責されたりした自衛官側はたまったものではない。

防衛庁長官時代、イラク派遣部隊の現場視察が計画された際に、複数回にわたって視察をドタキャンしたことも士気を下げた。

筆者は石破氏が防衛庁副長官だった当時には、「石破氏の話を聞いてみたい」という自衛隊の中堅幹部を連れて、焼き鳥持参で石破氏の宿舎を訪ね、缶ビールを片手に和気あいあいと談笑したこともある。

とはいえ、肝心の組織トップとなった際の振る舞いで失望を買うようでは仕方がない。自衛隊の最高指揮官としてふさわしくないと、自衛官自身が拒否反応を示している。

Getty logo

関連するキーワード


阿比留瑠比 石破茂 政治

関連する投稿


【赤いネットワークの闇】仁藤夢乃の師匠と〝西早稲田〟|池田良子

【赤いネットワークの闇】仁藤夢乃の師匠と〝西早稲田〟|池田良子

〝西早稲田〟をはじめとする赤いネットワークの危険を察知していた安倍元総理。だが、自民党議員の多くは無関心か無知である。北村晴男弁護士は言う。「詐欺師に一見して『悪い人』はいない。『いい人』だと思われなければ人を騙すことなどできないからだ」。(サムネイルは仁藤夢乃氏twitterより)


枝野幸男クン、あんたアホや|九段靖之介

枝野幸男クン、あんたアホや|九段靖之介

衆議院選挙で立憲民主党と日本共産党とが選挙協力をし、立憲が仮に、万が一、あり得ないだろうが、衆院選で政権を取ったら、共産党は「限定的な閣外からの協力」を行うことで合意。いまや「立憲共産党」とも言われているが、この合意から想起するのは、ソ連共産党の権力構図だった――。


岸田文雄氏の総裁選出が“理にかなっている”ワケ|八幡和郎

岸田文雄氏の総裁選出が“理にかなっている”ワケ|八幡和郎

注目を集めた自民党総裁選は、岸田文雄氏の勝利で決着がついた。 八幡和郎氏は以前から、岸田氏の外交力を高く評価。また、過去の寄稿で、河野太郎氏や高市早苗氏、野田聖子氏らを的確に分析している。改めて、2020年9月号の記事を掲載!


河野太郎氏は脱原発を封印していない|奈良林直

河野太郎氏は脱原発を封印していない|奈良林直

反原発団体や立憲民主党と同一の主張を繰り返す河野太郎氏。当時外相だった河野氏は、何ら指摘されてもいないのに、国際原子力機関(IAEA)に対して、「日本はプルトニウムを減らす」と宣言してしまった。「河野談話」に匹敵する「第二の河野談話」である。


安倍前総理に不快感? 足らざる男、石破茂|鈴木宗男

安倍前総理に不快感? 足らざる男、石破茂|鈴木宗男

5月26日発売の月刊『Hanada』7月号で安倍前総理が「ポスト菅」候補4人を実名で公表し、話題を呼んでいる。そこには、“茂”の一文字はあったのだが、残念ながらそれは石破茂の“茂”ではなかった…。政治家として、人として、何が足りないのか。鈴木宗男議員が石破氏の足らざる点を指摘!


最新の投稿


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法の早期施行を法務省に働きかけてきた。しかしながら、改正入管法成立前から私に対する事実無根の攻撃が始まった――。


【今週のサンモニ】新生「サンモニ」はやっぱりいつも通り|藤原かずえ

【今週のサンモニ】新生「サンモニ」はやっぱりいつも通り|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


なべやかん遺産|「終活」

なべやかん遺産|「終活」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「終活」!