部会で議員をバカに
安倍首相と石破氏のそりが合わないことは、周知の事実である。いまさら仲良くなれなどとは言わないが、石破氏はもう少し謙虚に、大人になるべきだろう。
今回の武漢ウイルス危機は当然だが、これまでの森友・加計問題などで安倍政権が苦しいときに、政権を支え、擁護する発言をしていれば、「石破さんも人間ができてきたな」 「成長したな」と言われていただろう。
だが実際は、これまでは逆に野党や左派メディアと一緒になって安倍叩きをやってきたとの印象が強い。
十数年前には、自民党国防部会などで、勉強不足の議員らを露骨にバカにすることもあった。自分では覚えていなくても、軽く扱われた側は忘れはしないだろう。議論で相手を言い負かしたつもりでも、相手はそうは思っていない場合が多い。
石破氏自身、その頃に、派閥の先輩で頭が切れることで知られた久間章生元防衛相からこんなことを言われたと語っていた。
「石破君、君は自分が一番賢い、自分が一番正しいと考えているようなところがあるが、そう思っているうちはまだまだだよ」
結局、政治家が大成するかどうかは、周囲に人が集まるかどうかで分かる。
安倍首相が潰瘍性大腸炎という持病の悪化でいったん政権を手放し、国民の軽侮を浴びながら、再び首相に返り咲けたのは、周囲に「この人をまた首相に」と思い、離れていかなかった者が少なくなかったからだろう。
一方、石破氏の周りに、絶対に石破でなければだめだと信じる者がどれだけいるか。現状では甚だ心もとない限りである。
著者略歴
産経新聞論説委員兼政治部編集委員。1966年、福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。90年、産経新聞社入社。仙台総局、文化部、社会部を経て、98年から政治部。首相官邸、自由党、防衛庁(現防衛省)、自民党、外務省などを担当し、第一次安倍内閣、鳩山内閣、菅内閣、第二次安倍内閣以降、首相官邸キャップを務める。著書に『総理の誕生』(文藝春秋)など。