金元雄光復会会長の祝辞はこの歴史観を露骨に示していた。元国会議員でもある金会長は、日本からの解放後、韓国民は1948年の「済州4・3抗争」(韓国建国に反対する共産勢力の武装蜂起)から2016年のろうそくデモ(朴槿恵大統領退陣要求)まで「親日反民族権力」に抵抗してきた、と驚くべき発言をした。「日帝の敗北後、米軍政を経て韓国政府が樹立された」と言って、建国という単語を使わない。
その上、「李承晩(元大統領)は親日派と結託した。韓国は民族反逆者をまともに清算できなかった唯一の国になり、その歴史は今も続いている」「親日未清算は韓国社会の基礎疾患だ」と韓国の現代史を汚れたものと非難し、韓国の反共自由民主主義勢力を「親日民族反逆勢力」だとおとしめた。
同じ日、ソウル中心部に10万人近くが集まって文在寅政権を糾弾した。コロナウイルス流行を理由にソウル市が集会を禁じた中で、暴雨にもめげず集まった参加者は「文在寅罷免」「この国はお前のものなのか」などと叫んだ。文在寅政権と与党の支持率が急落し、いま大統領選挙があれば野党候補に投票するという層が与党支持を上回る。反共自由民主主義勢力が政権を奪い返す可能性はある。ここに希望がある。(2020.08.17 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授。1956年、東京生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究科修了(国際学修士)。韓国・延世大学国際学科留学。82〜84年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。90〜02年、月刊『現代コリア』編集長。05年、正論大賞受賞。17年3月末まで、東京基督教大学教授。同4月から、麗澤大学客員教授・モラロジー研究所「歴史研究室」室長。著書に『でっちあげの徴用工問題 』など多数。