「日本に対話を呼びかけ」―。日本の多くのマスコミは8月15日の文在寅韓国大統領の演説にこのような見出しを付けた。しかし、その全文を読み、同じ式典でなされた光復会(独立運動家とその子孫の会)会長の祝辞を読むと、現政権下での日韓関係の正常化はほとんど不可能だと考えざるを得ない。
空疎な対話呼びかけ
文大統領はこう語っていた。
「大法院(最高裁)は1965年の韓日請求権協定の有効性を認めつつも、個人の『不法行為賠償請求権』は消滅しなかったと判断した。大法院の判決は大韓民国の領土内で最高の法的権威と執行力を持つ。政府は司法府の判決を尊重し、被害者が同意できる円満な解決方法を日本政府と協議してきたし、今も協議の門を大きく開けている」
戦時中の朝鮮人労働者問題については、日本で先に裁判が起こされ、最高裁で日本企業の勝訴が確定した。韓国の大法院は日本の判決を公序良俗に反するとして、その効力を否定した。日韓の司法が正面からぶつかっている。国家間の条約や協定を含む国際法は、国内法に優先する。国内の司法判断を理由に条約・協定の不履行を主張することはできない。日本政府は、韓国大法院判決により国際法違反状態が生まれたので、韓国政府の責任でこの状態を解消してほしいと繰り返し求めている。文大統領は演説で「国際法の原則を守るために日本と共に努力する」と言ったが、国際法を守る責任は韓国政府にある。共に努力する課題ではない。
文演説では1945年8月15日の日本からの解放と北朝鮮との平和共存の重要性が強調されたが、48年8月15日の大韓民国建国について言及がなかった。文政権とそれを支持するグループは、韓国の建国を汚れたものと見なす歴史観を持っているのだ。