トランプ政権の外交政策の内幕を暴露する著書を出版したボルトン前米大統領補佐官は最近、産経新聞とのインタビューで、「トランプ大統領は従来の米大統領とは違って本当に米軍を撤収させるリスクがあり、経費負担の増額要求をもっと真剣に受け止めるべきだ」と語った。
昨年、トランプ大統領は、6月25日にブルームバーグ通信で報道されたのを皮切りに、米国だけが防衛義務を負う日米安保条約の不公平さに3回にわたって文句をつけ、安保条約破棄の可能性に言及した。日本にとってはまさに青天の霹靂へきれきで、当時、大統領と行動を共にしていたボルトン氏に、大統領の真意がどこにあるのかを聞いてみたいと質問者が考えるのは当然だろう。
在日米軍撤退の可能性あり
ボルトン氏の口から「米軍は撤収しない」との返答を期待する向きが圧倒的に多数だったと推定するが、実際の答えは「撤収させるリスクがある」だった。
防衛問題の識者と言われる人々の大方の発言は注意しているつもりだが、トランプ発言に沈黙を守った人は少なくなかったように見受ける。発言の衝撃があまりにも大きかったからだ。保守派の論者にとって、日米同盟論は絶対的な価値を持つ。立論の根拠を同盟の相手国の最高指導者に否定されたら、自分の立場はなくなる。
自分の非を認めなければ、全ては相手が悪いことになる。全てトランプ大統領が間違っていると断定しなければ、辻褄つじつまが合わない。米民主党との交際が長かったせいもあって、米国人によるトランプ批判も重なり、礼を失する批判の表現が活字や画像に目立った。自分で国防に汗や血を流そうとせずに、他に依存しながら、「頼りにならぬ」と不平を言うに等しい。身の程を知らず、「米中対立の中で日本の進む道は橋渡し役だ」などと大口をたたく。