科学を装って人を騙す
「ナノ銀除染」といっても、知らない人のほうが多いだろう。
ナノサイズの銀粒子が放射性物質に核変換をおこし放射能を無害化する──こんな除染方法を東京・板橋区のホタル飼育専門の職員(当時)だった阿部宣男氏が、2011年の東日本大震災による福島原発事故の直後から主張し始めた。
だが、これはインチキだ。放射能を無害化するクスリなど、この世には存在しない。科学的根拠は全くないのに、科学を装って人を騙すニセ科学そのものだ。
日本共産党の板橋区議だった私は、区職員が「ナノ銀除染」という詐欺まがいのニセ科学を吹聴し、「ナノ銀簡易飲料用濾過セット」なる商品の販売にまで関与していた事実を知り、「ナノ銀除染はインチキだから騙されないように」という警告をSNSで発信。事実調査をしながら、区議会でもこの問題を何度も取り上げてきた。
「詐欺」を国会で大宣伝
調査のなかでさらに驚いたのが、このナノ銀除染が国会質問でも取り上げられていたことだ。ただし、インチキ除染への警鐘としてではなく、「新しい除染技術」として国の除染事業に取り入れろ、という主旨の途方もない要求だった。
その国会質問の主こそ、森ゆうこ参院議員だったのである。森議員は2013年3月6日の参院本会議で、次のような質問をしている。
「放射能対策は最優先の課題です。原発サイトの汚染水問題や各地の放射性汚泥など、一時的な管理は限界に達しつつあります。新しい技術も活用し、これまでにない発想で早急に対応すべきです。あわせて、放射能で汚染されたものを拡散する政策は世界の常識に反するものであると考えますが、総理の御所見を伺います。
例えば、新しい技術の中に、下村文部科学大臣も御関心のあるナノ純銀によるセシウム低減技術があります。2月6日、放射線関係の研究会で、半減期を著しく短縮させる減弱効果があったとの検証測定結果が報告されました。まずは、しかるべき機関に実情を調査研究させるべきと考えますが、下村大臣、いかがですか」