武漢ウイルス研究所の謎|山口敬之

武漢ウイルス研究所の謎|山口敬之

武漢ウイルス研究所を起点とする「人工ウイルス説」は果たして本当なのか。中国は否定するが、ポンペオ米国務長官はいまなお大きな懸念を示している――。発生源は武漢の海鮮市場なのか、それとも、武漢ウイルス研究所から流出したものなのか。門外不出の極秘情報をもとに、フリージャーナリストの山口敬之氏が武漢ウイルス研究所の謎に迫る!昨年12月に武漢を訪れた「謎の3つの団体」の正体とは……。


国民の生命より中国に忖度?

特に大きな衝撃を与えたのが、武漢市民が路上で突然倒れて動かなくなる数多くの映像だった。立ったまま気を失ったような、路面に激しく頭を打ちつけて動かなくなる様子は、「健常な大人には、死に至るほどの症状は出ない」という説明とは明らかに矛盾しているように見えた。

映像に映っていたのは、見るからに健康そうな若者やキャリーバッグを引きずった女性だったのだ。

さらに2月7日、ある中国人医師の死(6日)が世界に衝撃を与えた。武漢の病院に勤めていた李文亮氏は昨年末、新型ウイルスの脅威についてネット動画で警告を発した。

これに対し中国当局は「間違った情報を流布して社会を不安に陥れた」として李氏を処分した。中国当局が都合の悪い情報を隠蔽しようとしているのではないか、という疑念が世界中に広がっていた時、当の李氏の訃報が届いた。33歳という若さの李氏の死因が新型肺炎だったという事実は、内外の関係者に強い衝撃を与えた。

いまでもネットでは李氏の動画を見ることができる。昨年末の李氏は、見るからに健康そうだ。「高齢者や基礎疾患を持つ者以外は死なない」という日本政府の説明の根拠が、脆くも崩れ去ったのである。

また、「たとえ2次感染、3次感染が広がったとしても、多くの人命が失われるようなことにはならない」として、日中の往来制限に消極的だった日本政府の対応も、中国政府が武漢をはじめとする大都市を次々と封鎖したことで、説得力を失った。

「日本政府の対応は破綻している」という声が、国内のみならずアメリカやヨーロッパからも上がった。中国では封鎖前からすでに全土で感染者が確認されていたのだから、もはや都市を封鎖しても意味がないはずだ。だが、中国政府は都市を封鎖した。

そもそも国内の保守層の多くは、香港の民主化デモやウイグル問題への意識の高まりから、4月に予定されている習近平国家主席の国賓訪日に懸念を示していた。こうした空気のなかで、政権を支えてきた鉄板支持層すら、政府の煮え切らないウイルス対策に、「国民の生命より習近平への配慮を優先しているのではないか」と、不信と不満の声を上げ始めた。

政府の認識と対策は本当に正しいのか──こうした疑問の声は、実は2月中旬には政府中枢内でも秘かに広がっていた。決定打となったのが、アメリカの対応だった。

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米国はなにかを隠している――

11月の大統領選に向け、経済指標の底上げを至上命題としているトランプ政権は、今年に入ってからは、対中報復関税を緩和したり、ファーウェイに対する使用制限の実施を延期するなど、米中の緊張緩和をアピールし続けた。新型ウイルスに対する中国の対応についても、トランプ大統領はツイッターに「習近平国家主席はよくやっている」と投稿、対応に追われる習主席をねぎらう余裕すら見せた。

ところが、中国人のアメリカとの往来については、中国に滞在した外国人全ての入国を拒否する一方、アメリカ人の中国全土への渡航自粛を打ち出したのである。

日本政府の対応よりも迅速かつ厳格な水際対策だった。あくまでドライに実利を追求するトランプ大統領が、必要もないのに経済を冷え込ませる過剰な措置をとるはずがない。

「トランプ政権は、我々が知らない情報を握っているのではないか」

2月中旬に入ると、他にもいくつかの不自然な現象や兆候がキャッチされたことから、一部の政府中枢の関係者の間では、アメリカが新型ウイルスに関する重要な情報を隠しているのではないか、という疑念が秘かに広がっていった。

盤石と見られた安倍・トランプの日米蜜月にさえ亀裂が生じかねない疑念を政府中枢が持つに至った背景には、武漢という土地の特殊性があった。

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