黙殺され続けるLGBT当事者たちの本音|福田ますみ

黙殺され続けるLGBT当事者たちの本音|福田ますみ

雑誌『新潮45』の廃刊が一つのきっかけとなり議論が巻き起こったLGBT問題。メディアでは一部の活動家の声があたかも「LGBT当事者の声」であるかのように取り上げられ、野党議員も政権批判の道具、パフォーマンス材料としてそれに群がった。ところが騒ぎが静まると、まるで「用済み」と言わんばかりにメディアも野党もLGBTについては何ら関心を示さず今日に至る。 『新潮45』廃刊騒動とはいったい何だったのかー―。報じられなかった真の当事者たちの声をベストセラー『でっちあげ』、『モンスターマザー』(ともに新潮社)の著者であるノンフィクション作家の福田ますみ氏が追った。


私は、小川榮太郎氏の論文も、主張したかったのはこういうことなのだと思う。読者を挑発するような反語的表現はLGBT当事者に向けられたものではなく、イデオロギー化したLGBT概念に対してだ。これは杉田氏にもいえるが、「差別者だ」と糾弾されることを恐れることなく、LGBTブームの欺瞞をつく議論を展開する小川氏に、私は言論人としての気概を感じる。

小川氏への取材で私は尋ねた。

「差別というデリケートな問題について書く時、どうしても身構えて萎縮したり、自主規制の気持ちが働くが……」  

小川氏は即座に否定した。

「私は自主規制しない。すべての同調圧力が嫌いだから」  

小川氏は、松浦氏と本誌2018年12月号で対談してLGBTへの考察を深め、さらにその後、松浦氏の誘いで新宿2丁目にも出かけた。

「僕には当事者に対する偏見もないから、とても楽しい時間を過ごしました。ただ、LGBTを過度に人権問題化することと同性婚には反対です。これは変わりようがない」  

日本に生まれて本当に幸せ

私事で恐縮だが、私は30年ぐらい前から新宿2丁目に通っている。最近はさすがに足が遠のいたが、以前は常連の店がいくつもあった。今回のことを訊きたくて、久しぶりに2丁目に顔を出したが、ゲイのママたちの反応はすこぶる鈍い。

「ああテレビでやってたわね。雑誌? 読んでないわよ。生産性? 興味ないわ」  

39年やっていた店をつい最近畳んだばかりの金竹伊彦氏(71歳)に至っては、こういう。

「私はLGBTの運動なんてかかわりたくない。権利を声高に主張するのは大嫌い。こういうことは秘め事でいいのよ。私が弱者? バカいうんじゃないわよ。お店も繁盛して、世界中を旅行して回って楽しかったわよ。私はこの日本国に生まれて幸せでした。差別されたことなんかありません!」

著者略歴

福田ますみ

https://hanada-plus.jp/articles/248

1956年、横浜市生まれ。立教大学社会学部卒。専門誌、編集プロダクション勤務を経て、フリーに。犯罪、ロシアなどをテーマに取材、執筆活動を行っている。著書に『スターリン 家族の肖像』(文藝春秋)、『暗殺国家ロシア 消 されたジャーナリストを追う』(新潮社)などがある。2007年に『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)で第6回新潮ドキュメント賞を受賞。

関連する投稿


From Hope to Hostility: Conservative Party of Japan Faces Growing Backlash|Jason Morgan and Kenji Yoshida

From Hope to Hostility: Conservative Party of Japan Faces Growing Backlash|Jason Morgan and Kenji Yoshida

Political conservatives in Japan have entered into a season of re-sorting.


旧統一教会問題の真実 闇に葬られた冤罪「新世事件」|福田ますみ【2025年2月号】

旧統一教会問題の真実 闇に葬られた冤罪「新世事件」|福田ますみ【2025年2月号】

月刊Hanada2025年2月号に掲載の『旧統一教会問題の真実 闇に葬られた冤罪「新世事件」|福田ますみ【2025年2月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


トランスジェンダー予備自衛官の本音|小笠原理恵

トランスジェンダー予備自衛官の本音|小笠原理恵

バイデン大統領は2021年1月25日、トランスジェンダーの米軍入隊を原則禁止したトランプ前大統領の方針を撤廃する大統領令に署名した。米軍では大統領が変わるごとにLGBTの扱いが激変――。だが、自衛隊ではお互いに理解を深めつつ共存している。その一例をご紹介しよう。


【一周忌を終えて】安倍元総理の精神は政治家の鑑|和田政宗

【一周忌を終えて】安倍元総理の精神は政治家の鑑|和田政宗

7月8日、芝・増上寺において安倍晋三元総理の一周忌法要が執り行われた。その後の集会で昭恵夫人のスピーチを聞き、改めて昨年7月8日の衝撃が私の身体にもよみがえり、涙が流れた――。今回は安倍元総理のお人柄とエピソードを皆様にお伝えしたい。


私が稲田朋美議員を批判する理由|島田洋一

私が稲田朋美議員を批判する理由|島田洋一

日本の政治史を見渡しても、稲田朋美氏ほど、保守派の期待をここまで裏切った政治家は他にいないのではないか。


最新の投稿


【今週のサンモニ】給付と減税なら給付の方が断然マシ|藤原かずえ

【今週のサンモニ】給付と減税なら給付の方が断然マシ|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


教科書に載らない歴史|なべやかん

教科書に載らない歴史|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

高齢者のインフルエンサーと呼ばれ、ベストセラーを次々と出してきた和田秀樹氏が「幸齢党」を立ち上げた。 なぜ、いま新党を立ち上げたのか。 「Hanadaプラス」限定の特別寄稿!