行動に移さなければ何も変わらない
これらは、決して解決できない問題ではありません。人々がまとまり、団結すれば戦うことができます。
日本では希望を持てないと聞いています。日本の若者は30%しか投票に行かないとも聞きました。政治が信じられないのですね。
しかし、もし信じられないのであれば、自分が信じられるように何か行動してください。不平ばかり言っても、行動に移さなければ何も変わりません。生きるためには希望が必要です。行動しなければ、きっと希望よりも失望が勝利してしまうでしょう。
あなたの人生が希望のないものになってしまうとしたらどうでしょうか。
私は非常に批判的ではありますが、悲観的ではありません。反対です。私は人生を愛しています。
私たちは、社会をよくするために戦わなければなりません。それこそが人生の大義なのです。そして大義こそが、私たちの存在に意義を与えてくれるでしょう。
大切なのは勝利することではありません。「歩き続けること」です。歩き続ければ、100には到達できないかもしれないけれど、10ぐらいまでは到達できるかもしれない。
私は若かりし頃、革命運動に参加して世界を変えたいと夢見ていましたが、叶わなかった。
4度、逮捕・投獄され、1972年に逮捕された時には13年間、刑務所に入れられました。踏みつけられたり、ゴミ同然に扱われたりしたこともありました。とても辛い時期でした。
しかし、それほど辛い時間を過ごさなかったら、これまで言ったようなことを学ぶことはできなかったと思います。
軍事独裁の圧政などもありましたが、私は最終的に大統領になることができた。大統領になってからも、もっといろいろなことを実現したいと挑戦しましたが、途中で挫折して叶わなかったこともありました。
自分が切り拓こうとした道、自分が掲げた旗を引き継ごうとする人は必ずいます。私は、ほかの人が歩き続けられるように道を耕してきたつもりです。
私たちは「人生」という奇跡を得ている
政治的な立場をとるために、必ずしも何らかの政党に属する必要はありません。私は「人生」という党に属しています。
残念ながら、私はまだ神を信じるに至っていませんが、もし人生最後の時に神が現れたなら、「もう一度、生きさせてください」と頼むかもしれません。
はじめにも言いましたが、私たちは「人生」という奇跡を得ています。みなさん、どうぞよく生きてください。
それから、ぜひ家族を持ってください。家族とは、単に血のがった家族のことだけではありません。「同じ考え方を持った人」という意味です。人生を一人で歩まないでください。
アンデス山脈に住むアイマラ族では、貧しい人、かわいそうな人はコミュニティがない人、つまり孤独な人を指します。最大の貧困は「孤独」なのです。
私は何も、同感してほしいとの気持ちでこういった思いを話したわけではありません。
ただ、毎晩ベッドに入った時、たとえば5分でもいい。私の言ったことについてぜひ考えてみてください。
(2016年4月7日、東京外国語大学府中キャンパスで行われた講演「日本人は本当に幸せですか?」を整理再録)