きっかけはNHKの誤報
片山 2021年5月、私が呼びかけ人となり、新型コロナウイルス対策として除菌液などの有効活用を推進する「感染対策を資材と方法から考える超党派議員連盟」が発足しました。日本除菌連合や連盟加盟企業とともに、感染対策を資材と方法の観点から研究し、提言していきます。
このコロナ禍で、日本社会が感染症に対し脆弱だったことが明らかになりました。これからは感染対策に有効性があるものをフル活用し、広めていくプロセスなくしてコロナ禍には打ち勝てません。
しかし、有効性が証明されているのに、マスコミの誤報、印象操作により、活用されていない感染対策があります。その一つが、次亜塩素酸水の噴霧による空間除菌です。
福崎先生は、次亜塩素酸を用いた先進的活用技術を研究されており、議員連盟発足の際、基調講演もしていただきました。
福崎 次亜塩素酸水を含むすべての次亜塩素酸水溶液について、いまだに偏見をもっている人が多いですね。次亜塩素酸水溶液は、電車の車内除菌や介護施設など、広く使われていますし、先に行われたオリンピックでも、競技に使う道具や床、ベンチなどの除菌に活用されています。
多くの人が誤解を抱くきっかけとなったのが、月刊『Hanada』(2020年9月号)で奈良林直先生が詳しく書かれていますが、NHKの「誤報」です。
2020年5月、消毒液不足を受け、エタノールに替わる消毒液はないか、独立行政法人・製品評価技術基盤機構(NITE)が経済産業省の委託で行っていた検証試験の中間報告を発表。その中間報告では、「次亜塩素酸水は試験継続中のため効果が確認されていない」 「引き続き試験を継続する」としていたにもかかわらず、NHKはこう報じました。
〈「『次亜塩素酸水』現時点では有効性は確認されず NITEが公表」NITEでは、噴霧での使用は安全性について科学的な根拠が示されていないなどとして控えるよう呼びかけています〉
〈人体への安全性を評価する科学的な方法が確立していない〉
〈国際的にも消毒液の噴霧は推奨されていない〉
次亜塩素酸水が新型コロナに効かないどころか、人体に「有害」であるかのように報じたのです。
次亜塩素酸は、人間の体内で白血球のなかの好中球と呼ばれる細胞によって生成され、細菌やウイルスなど異物を撃退する成分で、人体にはほとんど無害です。
片山 本当に有害なら、アメリカをはじめとする先進国で使われていないはずですよね。
福崎 官庁主導の検証だったことに加え、NHKが誤報したものだから、文科省は学校に次亜塩素酸水の噴霧器の使用を禁止する通達を出し、一斉に撤去されてしまいました。その後、通達を修正し、有人空間に噴霧するケースを容認しましたが、いまだに噴霧器の使用は止まったままです。
SNSなどで「科学者」と称する人たちが、次亜塩素酸水の空間噴霧を批判しましたが、実際に自らが実験して出したデータに基づいてコメントしている人は皆無だった。
結局、NITEは最終報告で、塩素濃度が35ppm以上であれば新型コロナに有効であると結論づけていますが、誤解は広まったままです。
片山 ひどい話ですね。私はずっとウィズコロナで生活を再建するために有効な科学的要件として、空間におけるウイルスの量を減らすことをイメージしていました。ダイヤモンド・プリンセス号も、あれだけ感染が広がってしまった要因の一つに、換気があったと言われています。
厚労省は「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気について」で、〈室内の二酸化炭素濃度を1000ppmに維持する〉〈1人あたりの換気量として毎時約30㎥を確保すること〉としていますが、自治体はそんなガイドラインを配られてもどう具体化すればいいかよくわからず、困っていた。
経済力のある会社は換気システムにおカネをかけることができますが、そうじゃないところは悲惨です。地方の繁華街にある雑居ビルでは、一度、あるテナントから感染者が出たと思ったら、数日後には別のテナントで感染者が出て、同じビルから何度も感染者が出ているという話も聞きます。換気だけではなく、空間除菌でウイルスそのものを減らす必要性を感じたのです。
そんなことを考えていた折、救急車問題が起こりました。救急車にコロナ感染者を乗せると、その救急車は完全に消毒しない限り使えないため、救急車のローテーションがパンクしてしまう問題です。その救急車はなにで消毒しているのか調べてみると、ほとんどが次亜塩素酸水だった。
そこで、次亜塩素酸水に関心を持ち、詳しく調べてみると、消毒効果は科学的に完璧に認められており、空間除菌にも使用されていることがわかりました。ところが、昨年のNITEの中間報告とNHKの誤報によって、次亜塩素酸水の利用にブレーキがかかっていると知り、これではいけないと議連を立ち上げたのです。
私もいろいろ情報発信をしていますが、先生のおっしゃるように、なかなか次亜塩素酸水に対する誤解は解けません。