【読書亡羊】アメリカ・イスラエルの対イラン戦争で習近平がほくそ笑む理由  佐藤雅哉『アメリカはなぜイスラエルを支援するのか』(名古屋大学出版会)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


中国へのドローン売却計画も

さらに興味深いのは、アメリカがイスラエルを「起業国家(スタートアップ・ネイション)」と見なしているという指摘だ。

アメリカで2009年に出版された『スタートアップ・ネイション』というベストセラー書籍の影響が大きく、その本では以前は社会主義的だったイスラエル社会が新自由主義的なものへ転換していること、さらにはテック系をはじめとするベンチャー系の企業が多いことなどに加え、イスラエル軍の文化が起業家精神につながっていることを解説しているという。

確かに、『認知戦』(文春新書)の著者であるイタイ・ヨナトもイスラエル軍の諜報部に所属した後、インテリジェンスに関する会社を創業している。

イスラエルのIT系企業の業績や技術力、装備品の性能が高いのは、以前はソ連時代末期にユダヤ人技術者がイスラエルに移住したことの影響もあるが、それだけではなく徴兵制や軍事訓練、自国を守らなければならない切迫感やガザでの「実戦利用」なども相まって、テクノロジーを磨いてきた。

本書では、この点で非常に気になる指摘がされている。アメリカと同盟関係にあり、近年さらに蜜月関係にあるように見えるイスラエルだが、その一方で中国との関係を一層深めているというのだ。

その関係は1992年の両国の国交正常化から始まり、2000年以降は両国の間でイスラエル製の早期警戒システムや自爆型ドローンの売却が決まっていたこともあった。アメリカの牽制によってキャンセルとなったが、以降も両国の関係は続いている。

中国政府が提唱する広域経済圏構築の構想を、イスラエルはビジネスチャンスとして、また中国との関係をさらに発展させる契機としてとらえているという。

中国との関係がとりわけ緊迫していた(筆者注・第一次)トランプ政権期には、国務長官マイク・ポンペオがイスラエルに対して、中国との協調は安全保障上の脅威になる可能性があると警告を発している。

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