変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。今回は変わりつつある現場を取材した。


(撮影/筆者)

ここならプライバシーも守られる (撮影/筆者)

厚生棟の図書室は小規模ながらDVDの貸し出しも行っていた。今後は、蔵書の充実や学習環境の強化が求められる。情報収集や余暇の充実、リスキリング(再教育)にもつながる環境整備には、継続的な予算措置が必要だろう。隊員たちの厳しい任務を支えているのは、武力や装備だけではない。こうした生活環境の改善こそが、心身のバランスを保ち、部隊全体の持続力を高める基盤となる。

在沖縄米軍を取材した際、私は、軍人本人だけでなく家族の教育・生活にまで行き届いたサポート体制に驚かされた。米軍は常に多くの応募者を抱えているが、そのなかでも特に優秀な人材を引きつけるため、GAFAMなどの一流企業と競い合えるような待遇と生活環境の整備に力を入れている。その結果、サイバーセキュリティ部門をはじめとする高度専門分野でも、優れた人材を確保し続けている。

今、自衛隊もようやくその第一歩を踏み出したのだと感じる。

(撮影/筆者)

取材当日は「厚生物品展示会」が開催されていた。

会場には、カマボコテントやバーベキューコンロ、テーブルセットなどのキャンプ用品がずらりと並び、隊員に向けた貸し出しグッズとして紹介されていた。バドミントンセットなどの小さなレジャーグッズもすべて無料で借りることができる。故意による破損は弁償対象だが、経年劣化による損傷については、隊員の責任とはならない。安心して活用できる制度になっている。

こうしたレジャー用品の貸し出しは、以前取材した宮古島駐屯地でも見られた。予算増により、少しずつだが、全国の駐屯地に広がりつつある。静かではあるが確かな存在感を放つ千僧駐屯地の厚生センターは、隊員一人ひとりを支える憩いの場である。

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