全国で起きている親子間の訴訟
次はBさんの事例で、Bさんは両親の介護をしていた。両親には巨額の資産があり、毎日、高級ホテルで食事する習慣があった。恐らくAさんと同じような事情があったのだろうが、Bさんの兄弟が両親に後見人をつける申し立てを行った。
家裁が後見人に選んだ弁護士は、両親の生活費として合計10万円しかBさんに渡さなかった。今時、一人5万円でどうやって生活するのか。
両親は後見人がついた後も自宅で暮らしたが、高級ホテルでの食事を続けるためのお金を別途蓄えていて、それまで通りホテルでの食事を続けた。また資金が不足したときはBさんが立て替えることがあった。
ところが弁護士は、この食事代の出費は不要だったと主張して、両親の食事代に使った資金の返還をBさんに求める訴訟を起こし、Bさんは敗訴して破産に追い込まれた。この裁判は形式的には両親が子供のBさんを訴える形になったが、もちろん両親はBさんに感謝こそすれ、訴える気はさらさらなかった。
なお自宅などの不動産売却と同様、後見人弁護士は、被後見人の代理人として、被後見人の子供らを提訴した場合も、ボーナスをもらえる仕組みになっており、成年後見制度を利用した“親子”間の訴訟は全国的に起きている。
自治体や後見人による虐待名目の“連れ去り”事件
三番目のCさんのケースは、娘が母親を虐待したという名目で自治体が母親を施設に移し、母親に弁護士後見人がつけたもの。Cさんは母親と同居して介護していた。Cさんはうつ病を発症し、ある日、イライラして親とは別の方向に物を投げた。その模様をたまたま自宅を訪れたヘルパーが目撃した。自治体はCさんに事実関係を確認することなく、高齢者虐待防止法による保護名目で母親を連れ去った。自治体と後見人はCさんに何年間も母親の居場所を教えず、Cさんが代理人弁護士(森脇氏とは別)を通して面会を求める訴訟を起こしたところ、ようやく自治体施設で母娘の短時間の面会が2度実施されたが、Cさんがこれまでの自治体と後見人の対応を批判したため中止された。
数年後、弁護士後見人から突然、母親が緊急入院したことがCさんに伝えられて駆け付けたところ、母親はすでに心肺停止状態だった。
こうした自治体や後見人による虐待名目の“連れ去り”事件は非常に数が多く、森脇氏も、大都市とその周辺で類似の事件が多発しており、数多くの相談を受けていると報告書に書いている。