「住む場所も収入も失った。自殺するしかない」 成年後見制度の報じられない地獄|長谷川学

「住む場所も収入も失った。自殺するしかない」 成年後見制度の報じられない地獄|長谷川学

成年後見制度の実態が国民にほとんど知らされていないのはなぜなのか? 制度を利用したばかりに民主主義国家にあるまじき凄まじい人権侵害を受け、苦しんでいる人が大勢いる。法制審議会は成年後見制度の見直しに向けた議論を行っており、今年6月10日に見直しに関する中間試案を公表したが――。


この人権侵害問題に正面から切り込んでいるのが元高裁判事の森脇淳一弁護士だ。

森脇氏は広島、名古屋、大阪の高裁判事を務めて退官し、現在は、成年後見制度に関わる人権侵害の相談を受け付ける日本で数少ない弁護士として知られる。

成年後見制度による人権侵害行為の“加害者”は後見人を務める弁護士や司法書士、後見利用を申し立てた自治体、弁護士らを後見人に選任した家庭裁判所及び家裁を統括する最高裁など。従って被害者の代理人を務めることは、同業者である弁護士と司法書士、自治体や家裁などを敵に回し、場合によっては弁護士や自治体、国を提訴して裁判で争うことになる。

国と自治体、法曹界を敵に回して勝訴することは極めて困難で、労多くして益がないことから、後見制度による人権侵害の相談を受けても、ほとんどの弁護士は後難を恐れて関わろうとしないのが実態である。

国や自治体が加害者なので被害相談の窓口もないため、森脇氏のもとには被後見人(認知症高齢者や知的精神的障害者)及びその家族からの相談がひっきりなしにある。

「こんなことになるとは思わなかった」

厚生労働省HPより

その森脇氏が今年7月22日、法務省の法制審議会(後見部会)に招かれ、成年後見制度について意見を述べた。

法制審は中間試案発表後の8月に国民から意見(パブリックコメント)を募集する一方、森脇氏ら有識者や家族会などからも意見を聞いた。森脇氏と同じ7月22日には、一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表と、「後見制度と家族の会」代表の石井靖子さんへのヒアリングも行われた。

このうち宮内氏は、中間試案について筆者の取材に「内容がないうえに、わかりづらい書き方で、具体的にどうするつもりなのかよくわからない。全体的印象として、これまで通りの家裁主導と士業後見人報酬の高額化の傾向が顕著で、トラブルはなお増加すると思います」と答え、石井さんは「トラブル解決なしに民法改正はあり得ず、これをスルーして改正してもトラブルはなくならず、国民の多くは引き続きこの制度を利用しないでしょう」と語り、親族を後見人にするなど、親族を中心にした本来の制度に戻すことを求めた。

森脇氏は、判事時代から後見制度は問題が山積していると感じていたことを審議会委員に説明し、森脇氏の上司だった西岡清一郎広島高裁長官(当時)とのやりとりを紹介している。それによると、森脇氏が成年後見制度の混乱ぶりを伝ると、西岡氏は即座に「こんなことになるとは思わなかった」と後悔を口にしたという。西岡氏は最高裁家庭局課長や東京家裁所長などを歴任した家裁のエキスパートとして知られる。

森脇氏は審議会委員にこう語った。

「この制度は設計自体に問題があったと確信しています。裁判所にいた頃はまったく見えませんでしたが、弁護士になってからは、後見人の横暴により、数え切れないほどの不合理かつ非常に過酷な人権侵害とも言える被害が生じていることを知りました」

死ぬまで口座から毎年24~72万が引き落とされる

関連する投稿


被害者続出でも国は推進の異常! 成年後見制度は 「国家によるカツアゲ」|長谷川学

被害者続出でも国は推進の異常! 成年後見制度は 「国家によるカツアゲ」|長谷川学

なぜ国連勧告を無視し続けてまで政府は成年後見制度を促進するのか? なぜ新聞やテレビは被害者が続出しているにも拘わらず報じないのか? いまも平然と行われ続けている弱者を喰いモノにする「国家によるカツアゲ」。その実態を告発する。


暴かれたLGBT推進派の3つのウソ|山口敬之【WEB連載第24回】

暴かれたLGBT推進派の3つのウソ|山口敬之【WEB連載第24回】

LGBT法案の審議過程で、LGBT法成立を目指す推進派から数多くのウソと捏造報道情報がばら撒かれた――。ところが今月に入って、こうした主張がウソであったことが次々と明らかになってきている。ひとつひとつ解説していく。(サムネイルは稲田朋美議員Instagramより)


国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊

国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊

いま民主主義国であったはずのモンゴル国が、独裁国家中国によってその色を塗り替えられようとしている。そのような中、高市早苗大臣が会長を務める「南モンゴルを支援する国会議員連盟」が世界を動かした!


日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

「お前! 何者だと思ってるんだ、お前!! この場でサインをしなければ、片道切符で日本の配送センターに飛ばす」「中埜家に日本国憲法は関係ない」。日本が誇る大手食品メーカーが、婿に対してとんでもない人権侵害を行っていた――。2022年8月号に掲載され、大反響を呼んだ記事を特別無料公開!


与党にはびこる〝中国共産党代理人〟|長尾たかし

与党にはびこる〝中国共産党代理人〟|長尾たかし

欧米各国が中国による人権侵害を事実認定して、政府や議会において対応すべく法整備が整っているのに、なぜ日本だけは一歩も前に進めないのでしょうか。永田町、霞が関の広範囲にわたって、中国共産党の呪いがかけられているとしか思えません――。


最新の投稿


【今週のサンモニ】今年最後に「アッパレ!」発言が登場|藤原かずえ

【今週のサンモニ】今年最後に「アッパレ!」発言が登場|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

夫婦でロシア入国禁止の理由とは?|石井英俊

民間人にまで及ぶ「ロシア入国禁止措置」は果たして何を意味しているのか? ロシアの「弱点」を世界が共有すべきだ。


おばあちゃんからのメッセージ|なべやかん

おばあちゃんからのメッセージ|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!信じるか信じないかは、あなた次第!


【蒟蒻問答】高市に期待するのはタブーへの挑戦|堤堯×久保紘之【2026年1月号】

【蒟蒻問答】高市に期待するのはタブーへの挑戦|堤堯×久保紘之【2026年1月号】

月刊Hanada2026年1月号に掲載の『【蒟蒻問答】高市に期待するのはタブーへの挑戦|堤堯×久保紘之【2026年1月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


ツキノワグマとどう向き合うか|永幡嘉之【2026年1月号】

ツキノワグマとどう向き合うか|永幡嘉之【2026年1月号】

月刊Hanada2026年1月号に掲載の『ツキノワグマとどう向き合うか|永幡嘉之【2026年1月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。