民主主義国で行われている中国の人権弾圧
日本人であるあなたが、日本国内で反中国の活動を行ったからといって、日本政府から弾圧されるということなど想像できるだろうか。
実はいま独立国であり民主主義国であるはずのモンゴル国において、反中国のスパイ活動をおこなったという「罪」により、モンゴル国民がモンゴル国によって逮捕され、モンゴル国の刑務所に収監されるという信じ難いことが現実に起きている。
現在、世界で日本を含む各国に中国政府が設けている「海外警察」と呼ばれる公安の出先機関の存在が問題化している。中国の少数民族や人権活動家などの反体制派の活動を監視し、時には脅迫し、中国へ強制的な帰国もさせているという。
本稿で述べるムンヘバヤル・チョローンドルジ氏の不当逮捕というモンゴル国での異常事態も、この中国の海外警察の暗躍が関与しているとされる。中国の影響力の拡大を許せば何が起きるのかという禍々しい現実を突きつけられる事件でもある。
「中国による人権弾圧は中国で起きているだけではない。中国の国境の外でも、中国による弾圧が起きている」――本件を一言で言うとこうなる。民主主義国であったはずのモンゴル国が、独裁国家中国によってその色を塗り替えられようとしている。モンゴル国で何が起きているかをレポートする。
日本の重要なパートナー国が危うい状況に
モンゴルとはどのような国か。もともと一つであったはずのモンゴルは、ヤルタ会談の密約によって南北分断が固定化されてしまう。冷戦期にはモンゴルの北半分はソ連の影響下のモンゴル人民共和国に、南半分は中国の内モンゴル自治区となった。
その後、社会主義国であったモンゴル人民共和国は、ゴルバチョフの登場とソ連崩壊により、1990年には一党独裁を放棄、1992年にはモンゴル国へと改称して、社会主義を放棄して今日に至っている。この30年の間、複数政党制によって政権交代も度々起きており、民主主義国としての歩みを進めてきていた。
我が国との関係では、横綱の白鵬や朝青龍に代表される大相撲の関係でなじみが深いが、政治的には、モンゴル国が元は社会主義国であったことから北朝鮮と国交を有しているため、北朝鮮拉致問題での交渉の仲介役としての役割が大きい。
政治的にも国民感情的にも親日国であり、我が国にとって今後とも重要なパートナーの一つである。そのモンゴル国がいま危うい状況に陥っているのだ。