本稿では、日本の現状(宗教の処遇)が、国際的スタンダードに照らし、過度に制限的で
あるとの自覚に立ち、再整理をしたら良いとの所見をお示しした。平たく言えば、もう少
し「世間並み」に振舞う(=国際村で許容されているようなことは,「抑え込ん」だりせず、
おおらかに向き合う)のが良いと言うことだ。5点、確認しておく。
① 日本では、国の絡む葬儀、即位をはじめ多面にわたり、「宗教」が過剰に抑え込まれている。実際に行われている「抑え込み策」の中には、憲法が要請していないにもかかわらず規制しているものすらある。
② その背景としては、「政教分離」への誤った思い込み・誤解があると同時に、ある種の官僚主義が頑なかつ杓子定規な対応を助長している面があることを指摘しておきたい。
③ 要するに、日本の公的機関は、司法を含め、宗教に対し冷淡な姿勢を示している。まま、反宗教的な色彩すら感じられる(国際的に言えば、かなり「左」に位置しており、中国的と言える場合すらある)。せめて、西欧中道派並みのおおらかな姿勢に転じたらよい。
④ 特に、文化面、歴史面で極めて重要な施設や祭事は、たとえ宗教性を帯びたものであっても、公的補助の対象としてよい。
⑤ 他方、憲法の関連規定が曖昧(然も、悪文)であることも大問題だ。改善を求めたい。

1948年東京生まれ。1970年東京大学教養学部を卒業後、外務省入省。1973年英ケンブリッジ大学経済学部卒業、のちに修士課程修了。国際交流基金総務部長、スペイン公使、メルボルン総領事、駐グアテマラ大使、国際研修協力機構(JITCO)常務理事を経て、2006年10月より2010年9月まで、駐バチカン大使、2011年4月より杏林大学外国語学部客員教授。著書に『現代日本文明論 神を呑み込んだカミガミの物語』(第三企画)ほか。論文、エッセイ多数。