【読書亡羊】議員が総裁選に出る「もう一つの目的」とは?  高村正彦・兼原信克・川島真・竹中治堅・細谷雄一『冷戦後の日本外交』(新潮選書)

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勝てるとは思いませんでしたが、国債発行枠30兆を止められればいいと思って、それが最大の目的でした。さらに少子化は大問題であることを皆に印象付けたかった。

国債発行枠30兆円とは、公共事業費10%減と並んで小泉改革の目玉になっていた。無駄の削減、改革の目安として国民の受けは良かったが、緊縮財政がデフレを長引かせたとの指摘もある。また、2001年こそ達成できたこの目標だったが、後は2006年に達成できただけであった。

高村氏は2003年時点で「30兆円枠」に反対で、そのことを訴えるために総裁選に出たというのである。

つまり、政権の方針に異を唱え、党内、あるいは国会で議論すべきであると訴えるとともに、国民に対しても論点を提示するのが総裁選出馬の目的であり、敗れはしたものの目的は達成した、というわけだ。

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だから活気づく自民党の総裁選

確かに自民党総裁選は、現在も同様に始まる前からメディアで大きく取り上げられ、各々の主張も詳しく紹介される。しかも討論会や会見では候補者が自民党内の議員に限られるからこそ、(野党の追及とは違って)単に相手の揚げ足を取るだけではない議論も可能になる。

前回の総裁選で安倍元総理は高市早苗氏を推したが、これは「自民党は保守政党であり、靖国参拝など、保守の論点が総理を決める場で論じられるべきだ」という思いもあってのことだったろう。

確かに、もし高市氏が立候補していなければ、自民党内のリベラル派の面々が、リベラルな話をして終わってしまっていたに違いない。さすがに憲法改正は論じられただろうが、靖国参拝や夫婦別姓問題などは論点になりえなかった可能性がある。

今回の総裁選でどのような論戦が展開されるか。まだ役者もそろっていない段階だが、高村氏のように自らの主張を大々的に訴える場として当選目的ではなく「実」を取る候補がいてもいいし、総裁選はそれによってより活気づく面もあるだろう。

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