愕然とするNHKの回答
NHKの回答は次の通りである。
ご指摘のナレーションは、民法の特定の条文や、改正過程で検討された文言などを引用したものではありません。民法改正をめぐる当時の状況やその内容を、視聴者の皆さまに分かりやすくお伝えするために表現しました。
なお、視聴者からの問い合わせには、同様の趣旨の内容をお答えしています。
皆さんもこの回答を読んで愕然とすると思うが、NHKは戦後の民法の改正作業についてのナレーションにおいて、民法の特定の条文や改正過程で検討された文言は根拠としておらず、「民法改正をめぐる当時の状況やその内容を、視聴者の皆さまに分かりやすくお伝えするために表現しました」と説明するが、私が札幌地裁の判決文等を基に述べてきたように、NHKの言う「民法改正をめぐる当時の状況やその内容」は、婚姻は「両性の合意」であって「双方の合意」とする理由はなく、歴史の捏造に近いという指摘をやはり否定できないのである。
根拠もないことがさも歴史的事実かのように公共放送で伝えられることは極めて危険なことである。過去、「従軍慰安婦」問題のように、歴史的事実がないのに捏造によって事実のように広まってしまったものがある。NHKはあえて歴史的事実を改変し、何か流れを作ろうとしているのだろうか。
昨年、私が退席して反対の意思を示したLGBT理解増進法の成立後、トランスジェンダーの方が戸籍上の性別を変える際の要件で、これまでにない裁判所の決定が行われている。裁判所は社会情勢の変化を見ることから、立法府の意志は重く受け止められる。また、主要メディア、特に公共放送が作り出す流れは社会情勢に多大な影響を及ぼす。
NHKはこのことが分かっているのだろうか。それともあえて流れを作ろうとして今回のナレーションを作成したのか。後者ならば、事実と向き合うメディアとしては有り得ないことであり、公共放送としての役割は終えなくてはならなくなるだろう。
著者略歴
1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で再選。