試験問題自体が軍事機密の可能性
内倉航空幕僚長は「試験問題の管理が一部適切に行われていなかった可能性があり」と試験問題管理に問題があったことを認めた。試験問題も回答もどちらもが秘密に当たる可能性が高い。だから、外部漏洩があればさらに深刻な事件となる。
自衛隊法にある「秘密の保護」や「秘文書の取扱い」に抵触すれば、間違いなく処罰の対象になる。
試験問題には、職種運用の教範や訓練資料に書かれている事項に忠実に沿った文で解答しなければならない問いがあると聞く。また、幹部自衛官でなければ知らないような文言やルールに基づいた指示を問う問題もあると聞く。そうであれば、試験問題自体が軍事機密だろう。
今回不正が発覚したCS試験は、以前、試験問題漏洩事件となった陸上自衛隊幹部候補生試験よりもさらに上級選抜試験であり、将来の自衛隊を統べる将官(諸外国では将軍の階級)となる人材を選抜する試験だ。最高幹部を選ぶ試験での不正発覚を自衛隊は恥じていただきたい。
この試験は幹部普通課程を修了し、航空自衛隊英語技能検定総合4級以上、所属部隊長から推薦された37歳未満の3佐及び昇任後2年以上経過した1尉の志願者しか受験できない。航空自衛隊では生涯に4回しか試験を受けることはできない。真面目に試験に挑んだ航空自衛隊幹部たちはせっかくの受験に泥を塗られて、泣くに泣けない気分であろう。
ただ、ひとつだけ救いはある。内倉航空幕僚長は潔く、この問題があったことを認めたことだ。このような不正が2度と起こらないように、不正を隠蔽することなく問題を明らかにした上で、しっかりと対処していただきたい。
著者略歴
国防ジャーナリスト。関西外国語大学卒業後、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動を開始。 2009年、政治や時事問題を解説するブログ「キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)」を開設し注目を集める。14年からは自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」を主宰。月刊『Hanada』、月刊『正論』、夕刊フジ、日刊SPA!などに寄稿。19年刊行の著書『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)は国会でも話題に。2022年10月、公益財団法人アパ日本再興財団主催・第15回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞!産経新聞コラム「新聞に喝!」を担当。