「パンダ」はいらない!|和田政宗

「パンダ」はいらない!|和田政宗

中国は科学的根拠に基づかず宮城県産水産物の輸入禁止を続け、尖閣への領海侵入を繰り返し、ブイをEEZ内に設置するなど、覇権的行動を続けている。そんななか、公明党の山口那津男代表が、中国にパンダの貸与を求めた――。(写真提供/時事)


「日本の子供達へ贈る言葉」

ネルー首相は、この象に娘の名を取ってインディラと名付けた。インディラは、昭和24(1949)年8月にコルカタを出発し、9月に船で芝浦に到着、昭和通りを歩いて上野に向かった。そして、インディラより20日ほど早く、タイ国からの友好の証として到着していた象の花子と対面することになる。

10月1日には贈呈式が行われ、5万人が集まった。吉田茂首相が出席し、インドのムルハルカー駐日代表部主席代理が、ネルー首相の子供達への手紙と吉田首相への贈呈書を読み上げた。この子供達への手紙はとても感動的な内容であるので、全文を紹介したい。

「日本の子供達へ贈る言葉」

皆さん 私は皆さんのお望みによって、インドの象を 1 頭、皆さんへお贈りする事を、大変うれしく思います。この象は見事な象で、大変にお行儀が良く、そして聞くところによりますと、体に縁起のよいしるしを、すっかりそなえているとのことです。

皆さん、この象は、私からのではなく、インドの子供達から日本の子供達への贈り物であることをご承知ください。

世界中の子供達は、多くの点でお互いに似かよっています。ところが大人になると変り出して、そして不幸なことには時々けんかをしたりします。私達はこのような大人達のけんかを止めさせなければなりません。

そして私の願いはインドの子供達や日本の子供達が成長した時には、それぞれの自分達の立派な祖国のためばかりではなく、アジアと世界全体の平和と協力のためにもつくして欲しいということです。ですから、このインディラという名を持った象を、インドの子供達からの愛情と好意の使者として考えてください。

インディラは東京でたったひとりぼっちで、あるいは少しさびしがって遊び友達を欲しがるかも知れません。もし皆さんのお望みならば、インディラがこれから自分の住家としていく国で幸福になるように、インディラのためにお友達の象を 1 頭送るようにすることもできます。

象というものは立派な動物で、インドでは大変に可愛がられ、しかもインドの特に代表的なものです。象は賢くて辛抱強く、力が強くしかも優しいものです。私達も皆、象の持つこれらの良い性格を身につけるようにしてゆきたいものです。

終りに皆さんに私の愛情と好意とをおくります。

ニューデリー 1949年9月1日 インド国首相 ジャワハルラル・ネール

(日印協会等の資料より)

仙台へのパンダ誘致は認めない

こうしてインドから贈られたインディラは、多くの日本人に愛された。インディラは天寿を全うし、昭和58(1983)年、49歳で亡くなった。

そして、この物語には続きがある。インディラが亡くなったとの報がインドにも届いた。その報に接したのは、インディラ・ガンジー首相である。ネルー首相の娘であり、象のインディラの名前のもとになった人物である。インディラ・ガンジー首相は、インディラの死去を悲しみ、日本に新たに象を贈ることを決め、自ら命名したアーシャ(希望)とダヤー(慈悲)の2頭の象を上野動物園に贈ったのである。

動物外交は外交上大いに効果があり、その他の国においても、オーストラリアがカモノハシを友好の証として贈ったり、日本も平成24(2012)年には秋田犬を、東日本大震災におけるロシアからの被災地支援の御礼としてプーチン大統領に贈った。

実は、私の大学時代の専門は日本外交史であり、研究テーマとして動物外交も扱い、その後の各国の動物外交も注視してきた。ここまで述べてきたように、各国は動物を友好の証としてだけでなく、情報工作の一環として使う場合があり、中国のバンダはその最たるものである。だからこそ、日中関係の懸案が解決しないなかで新たにパンダを受け入れるということはあってはならない。

我が国の尖閣諸島における侵略的行動をやめ、不当に拘束した日本人を解放し、科学的根拠に基づかない日本産水産物の輸入禁止を中国がやめないのなら、外交上の友好関係を進めるなど有り得ない。「パンダは可愛い」「子供が喜ぶ」で、外交上の毅然とした態度を緩めてはならない。

現状において仙台へのパンダ誘致は絶対に認めないし、受け入れ拒否で行動していく。

関連する投稿


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

ある駐屯地で合言葉のように使われている言葉があるという。「また小笠原理恵に書かれるぞ!」。「書くな!」と恫喝されても、「自衛隊の悪口を言っている」などと誹謗中傷されても、私は、自衛隊の処遇改善を訴え続ける!


【我慢の限界!】トラックの荷台で隊員を運ぶ、自衛隊の時代錯誤|小笠原理恵

【我慢の限界!】トラックの荷台で隊員を運ぶ、自衛隊の時代錯誤|小笠原理恵

米軍では最も高価で大切な装備は“軍人そのもの”だ。しかし、日本はどうであろうか。訓練や災害派遣で、自衛隊員たちは未だに荷物と一緒にトラックの荷台に乗せられている――。こんなことを一体、いつまで続けるつもりなのか。


自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

自衛官の処遇改善、先送りにした石破総理の体たらく|小笠原理恵

「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と日米安保条約に不満を漏らしたトランプ大統領。もし米国が「もう終わりだ」と日本に通告すれば、日米安保条約は通告から1年後に終了する……。日本よ、最悪の事態に備えよ!


自衛隊の特定秘密不正の多くは政令不備、いますぐ改正を!|小笠原理恵

自衛隊の特定秘密不正の多くは政令不備、いますぐ改正を!|小笠原理恵

潜水手当の不正受給、特定秘密の不正、食堂での不正飲食など、自衛隊に関する「不正」のニュースが流れるたびに、日本の国防は大丈夫かと心配になる。もちろん、不正をすれば処分は当然だ。だが、今回の「特定秘密不正」はそういう問題ではないのである。


最新の投稿


【今週のサンモニ】給付と減税なら給付の方が断然マシ|藤原かずえ

【今週のサンモニ】給付と減税なら給付の方が断然マシ|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

【今週のサンモニ】いつまでも進歩しない国家防衛思考|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


教科書に載らない歴史|なべやかん

教科書に載らない歴史|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

「医療の壁」を幸齢党がぶっ壊す!|和田秀樹

高齢者のインフルエンサーと呼ばれ、ベストセラーを次々と出してきた和田秀樹氏が「幸齢党」を立ち上げた。 なぜ、いま新党を立ち上げたのか。 「Hanadaプラス」限定の特別寄稿!