そしてようやく昨年、平成30年10月にそれは実現することになったのである。島に上陸したのはSさんの他に、大洲市市議会議員の弓逹(ゆだて)秀樹さん、市役所職員、獣医師3名、獣医師を派遣した公益財団法人どうぶつ基金のスタッフ、県内外から集結したボランティアの面々。
島の総人口はそのときすでに、死去や入院などで3世帯6人にまで減っていた。
手術のための猫の捕獲が始まる。ところが間もなくボランティアの間から悲鳴が上がった。
「200匹以上いる!」
餌をねだりに人間に近づく
用意していたケージの数が足りなくなったのだ。後方支援を要請してケージを増やし、捕獲を続行、翌日から手術を開始。折しも台風の接近で定期船が欠航するかもしれないという事態になり、急遽10数人が着の身着のままで手術会場に宿泊することが決まる。その日の深夜、最後の1匹の手術が終了した。
結局捕獲されたのは210匹。うちすでに手術済みだった猫を除いた172匹を一昼夜で手術するハードな事業となった。
人気猫・ドキンちゃん。片耳の先がカットされているのは手術済みの印
島民Kさんは翌朝、どうぶつ基金の担当者にこう語ったという。
「これまでは猫たちが可哀想でした。ここで生まれた子猫たちはすぐ死ぬんですよ。子孫を残したい本能に駆られたオス猫が子猫やメス猫を襲うし、オス同士はケンカしてケガが絶えないし……。手術をすることでケンカもなくなって、みんなが穏やかに暮らせるようになれば本当にうれしい」