愛媛県・青島 人口6人、猫210匹の島の大プロジェクト

愛媛県・青島 人口6人、猫210匹の島の大プロジェクト

瀬戸内みなみの「猫は友だち」 第6回


【港を散歩する猫】

住民がたった15人の小さな瀬戸内海の島に、150匹の猫がいる。豊かな島の自然に抱かれて、ひと懐こい猫たちがのんびり、のどかに暮らしている……。

牧歌的な、あまりに牧歌的な光景だ。そのイメージが主にSNSで広まって、愛媛県大洲市の青島は数年前から一躍、世界的に有名になった。

【海辺を散歩する猫】

でもここは本当に猫の楽園なのか?

危機感を抱いたのが、愛媛県内で猫保護活動をしているSさんだ。島民の平均年齢は70歳を超えている。島民自身も市も、今さらこの小さな漁業の島を盛り立てて活性化しようという意欲には乏しい。近い将来、無人島になってもおかしくないというのが現状なのだ。

【来訪者が猫に餌をやる場所は決まっている】

いうまでもなく野生動物ではない猫たちは、島民のKさんが毎日与える餌に頼って生きている。高齢のKさんにとって体力的にも経済的にも大変な負担だ。でももしもそのうち、誰も世話ができなくなったら150匹の猫たちはどうなる? 最悪の事態だけは避けたい、と思うのがふつうの人間ではないだろうか。

まずは猫がこれ以上繁殖して増えないよう、全頭に不妊去勢手術をしなければならない。そう決心したSさんは4年かけて粘り強く島民と大洲市を説得し、県内外に協力を呼びかけた。

【青島の猫。手術済みで片耳の先がカットされている】

そしてようやく昨年、平成30年10月にそれは実現することになったのである。島に上陸したのはSさんの他に、大洲市市議会議員の弓逹(ゆだて)秀樹さん、市役所職員、獣医師3名、獣医師を派遣した公益財団法人どうぶつ基金のスタッフ、県内外から集結したボランティアの面々。

島の総人口はそのときすでに、死去や入院などで3世帯6人にまで減っていた。

手術のための猫の捕獲が始まる。ところが間もなくボランティアの間から悲鳴が上がった。

「200匹以上いる!」

【餌をねだりに人間に近づく】

用意していたケージの数が足りなくなったのだ。後方支援を要請してケージを増やし、捕獲を続行、翌日から手術を開始。折しも台風の接近で定期船が欠航するかもしれないという事態になり、急遽10数人が着の身着のままで手術会場に宿泊することが決まる。その日の深夜、最後の1匹の手術が終了した。

結局捕獲されたのは210匹。うちすでに手術済みだった猫を除いた172匹を一昼夜で手術するハードな事業となった。

【人気猫・ドキンちゃん。片耳の先がカットされているのは手術済みの印】

島民Kさんは翌朝、どうぶつ基金の担当者にこう語ったという。

「これまでは猫たちが可哀想でした。ここで生まれた子猫たちはすぐ死ぬんですよ。子孫を残したい本能に駆られたオス猫が子猫やメス猫を襲うし、オス同士はケンカしてケガが絶えないし……。手術をすることでケンカもなくなって、みんなが穏やかに暮らせるようになれば本当にうれしい」

【人気猫・ドキンちゃん】

猫に手術をするのは人間のエゴだという意見もある。一面では確かにその通りだ。だが人間が引き起こした事態は、やはり人間が責任を取らなくてはならない。Kさんの言葉は、その責任の過酷さを物語っているのではないだろうか。

(初出:月刊『ねこ新聞』2019年2月号)

※「日本で唯一の『猫文学』新聞」、月刊『ねこ新聞』については公式サイト( http://www.nekoshinbun.com )をご覧ください。

 

■青島の猫たちについてもっと詳しくは、AERA dot.の記事

「愛媛県・青島『猫の楽園』の未来(瀬戸内みなみ)」をお読みください

https://dot.asahi.com/dot/photoarticle/2019022100058.html?page=1

著者略歴

瀬戸内みなみ

作家 広島県生まれ。上智大学文学部卒業。会社勤務などを経て、小説、ノンフィクションなどを手掛けている。テーマは猫と旅と日本酒。著書に『にっぽん猫島紀行』(イースト新書)。月刊『Hanada』で「わが人生に悔いなし」を連載中。



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