成田空港でまさかの逮捕
妻側がロンドン市警に被害届を提出後、すぐさま私は取り調べを受け、2017年4月に英国にて起訴、ここで勤務先をクビになりました。
もちろん、私は妻への夫婦間レイプを否認しましたが、2018年3月22日に有罪判決(陪審員12名中11名が白人)、11年の実刑となってしまったのです。
同日から英国の刑務所に投獄、服役。治安も悪ければ、人種差別もひどい刑務所でしたが、奇跡的に無傷で生き延びました。私はここで、英国の大学院通信課程を受講し、数学の修士号を取得しました。
また、所内で英国人受刑者らに小学校卒業資格を取らせるための算数や英文法(!)の指導係として、従事しました。このように歯を食いしばって模範囚中の模範囚で通し、刑務所長から表彰を受けるなどしました。黄色人種(英国の刑務所ではアジア人は最下層!)の外国人が、です。
英国のスタンダードな拘禁期間は量刑の半分で、さらに私は外国人であったため1年短くなります。つまり、私の拘禁期間は4年6か月です。事務上の誤差を含め、最終的には4年8か月を英国で服役したのち、昨年、2022年11月11日に釈放、出所、日本への帰国となりました。
しかし、11月12日に成田空港に到着すると、警視庁愛宕署の刑事がおり、その場で逮捕されました。容疑は以下です。
《10年前の2013年10月23日、芝公園プリンスタワーホテルにて当時の妻にDV行為をはたらいた傷害の容疑》
湾岸署留置を経て起訴、公判請求されて、現在、東京拘置所にいる次第です。なお、私は日本で前科はありません。
第2、第3の私が日本でも
するはずのない夫婦間レイプで英国で4年8か月も投獄され、文字どおり、地獄のような日々を余儀なくされた私は、言葉で反省を口にする人よりもはるかに法廷上の「反省」や「償い」を行ってきたと言えます。
その私を、東京地検はさらに日本においても当事者を同じくする「一連の事件」で二重処罰しようとしており、これはいかにも行為と処罰の間のバランスを欠いているのではないでしょうか。
日本での公判(当時の妻へのDV傷害事件)は、1月24日に初公判、3月1日に第2回公判が東京地裁で行われました。いずれの期日も罪状認否のみであり、私は否認の立場です。
そして、すでに社会的制裁や刑事的制裁を十分に受けてきた、それが私の認識です。
私は決して褒められた夫ではなく、民事的な文脈では「DVモラハラ夫」だったかもしれません。しかし、刑事責任や刑事処罰を科されるようなことはしていません。にもかかわらず、なぜ私は4年8か月もの間、投獄されなければならなかったのか。
到底承服できるものではありませんでしたが、陪審員の評決を尊重し、服役しました。それでも足りないという元妻や東京地検とは争います。これが私の立場です。
英国における夫婦間レイプの件は、いずれ控訴するつもりです。控訴はいつでもどこでもできますので。
夫婦間レイプで投獄された初の日本人は、おそらく私だと思います。ですが、これは英国という外国の法域での話です。日本でも3月14日、「強制性交罪」を「不同意性交罪」に変更するなどの刑法の改正案が閣議決定されました。
今国会で成立を目指すようですが、今後、日本においても法改正が積み重ねられていくと、私と似たような状況に陥る人が必ず出てくるでしょう。
【編集部追記】
荻原岳彦氏は小誌7月号(5月26日発売)に本記事が掲載された後、2023年7月、東京拘置所を保釈された。元妻により日本でもDV傷害で訴えられた刑事裁判は現在も続いている。
(初出:月刊『Hanada』2023年7月号)