このシナリオでは結果的に、プーチンがウクライナの幾つかの部分を奪い取った状態が受け入れられることになるので、それを見た中国が台湾を取ってしまおうと考える可能性があることにも言及しつつ、しかし実際は逆になるという見通しを示している。というのも、ラマスワミの見方では、現在米国はロシアを中国側に押しやっている。
つまり、中国は、それにより接近した中露両国との衝突をアメリカが避けたいと見るはずである。従って、それを逆手にとって、ロシアを中国から引き離す形にしてしまえば、中国は台湾侵攻について再考が必須になるはずだというのだ。なので、戦争なしに習近平国家主席による台湾侵攻を阻止する一番の策は、中国からロシアを引き離すことだという。
台湾政策で大胆な訴え
また台湾政策については、初年度に、台湾を軍事的に防衛するかどうかについての「戦略的曖昧さ」を、「戦略的明瞭さ」に変えるという。これはかなり大胆な訴えだ。米国が半導体で自立する前に中国が台湾へ侵攻すれば、米国は台湾を防衛するという。それを赤裸々に公で言うべきかの議論はあるが、ラマスワミは、堂々と素直に世界に伝えることこそが国益にかなうことであり、大統領としての道徳的義務であるとの考え方を示している。そうすれば諸外国も信頼してくれるだろうと。
全体的な方向性から具体的で現実的な政策まで理路整然と説明するラマスワミの演説のライブ配信のチャット欄には、アメリカの独立宣言が行われた年である「1776」の文字が踊っていた。在日米国人である私の友人も「政府はいらない、アメリカには今革命が必要だ」と日常的に真面目な顔で発言する程なので、文化的にも認識としても保守派のアメリカ人の間では革命が必要だとの意識が近年の間に盛り上がっているように感じる。
ラマスワミもいつも演説の中で「漸進的な改革を望むのか、それとも革命を望むのか」という問いを繰り返しつつ、任期もなく腐敗の進んだFBI、IRS、ATF、CDC、NRC、教育省といった政府機関を閉鎖し、「我ら人民」の手に取り戻し、立憲連邦共和国の在り方を復活させることや、官僚組織の改革は不可能な次元なので、自分は改革よりも革命の立場を取ると毎回のように宣言している。