私が稲田朋美議員を批判する理由|島田洋一

私が稲田朋美議員を批判する理由|島田洋一

日本の政治史を見渡しても、稲田朋美氏ほど、保守派の期待をここまで裏切った政治家は他にいないのではないか。


稲田議員のTwitterより

2年前(2021年)の6月5日、稲田氏は次のようなツイートを発している。

〈天安門事件から32年目の昨夜、ボヘミアン・ラプソディーがテレビ初放映。中国では同性愛部分は削除されて公開されたらしい。日本は中国とは違う。言論の自由が保障され、自由と民主主義と多様性を重んじる国だ。LGBT理解増進法を成立させることが日本の価値観を世界に発信することになる〉

中国当局が自由民主化運動に血の弾圧を加えた天安門事件記念日を念頭においた元防衛大臣の発信がこの内容だけとは驚く。映画の同性愛場面カットなどとは比較にならない中国共産党の暴虐行為が目に入らないのだろうか。稲田ツイートは、日本の政治家のものとして、非常に恥ずべき内容と言わざるを得ない。

しかも、稲田氏も認めるように、日本では映画の同性愛場面は何らカットの対象となっておらず、LGBT理解増進法など必要ないという傍証にすらなる発言である。

こういうツイートを見ると、稲田氏の軽重の感覚と知的誠実さを疑わざるを得ない。

稲田氏が金科玉条視する「性自認」についても、あらゆる自認は時と状況に応じて変わり得るし、意図的虚偽の場合もある。

左翼活動家の代弁人となりながら、いまだに「保守」を自認している稲田氏自身がよい例である。性自認は信用できるし変わらないと、いくら稲田氏に主張されても説得力を持たない。

議員を辞職し、LGBT弁護士になるべきではないか

「左翼活動家の代弁人」は決して言い過ぎではない。他にも例がある。

櫻井よしこ氏は、法相の諮問機関である法制審議会・家族法制部会が、「国際社会に逆行して単独親権という異常な状態を恒久化する」方向に動いており、背景に「法制審の議論がNPO法人『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』理事長の赤石千衣子氏ら人権派の人々に主導されている」状況があると指摘した上、「赤石氏らを結果として政権中枢に入れた稲田朋美氏、森雅子氏らには、法制審の暴走を阻止する重い責任があるのではないか」と自民党に左翼活動家を呼び込んだ議員らの姿勢を厳しく批判している(『週刊新潮』、2022年6月16日号)。

稲田氏は財務省の代弁人でもある。この点でも安倍氏の教えに反している。

岸田首相が愛着を寄せる宏池会は、自民党の各派閥の中でも最も財務省に近い。財務官僚は「子飼いの岸田が首相の間にあらゆる増税を実現ないし布石を打っておこう」と考えているだろう。

周りを財務省人脈に囲まれた岸田首相に欠けているのは、安定成長こそが安定財源という認識である。政治の責任は、成長戦略を打ち出し、実現させることにある。増税は成長を阻害する。

岸田氏は、「国債は、未来の世代に対する責任として取り得ない」とよく財務省直伝のセリフを口にするが、経済成長で毎年自然増収を生めば、国債は償還できる。その自信がないなら辞任すべきだろう。

稲田氏は現在、「子育て増税」で旗振りの先頭に立っており、防衛増税に関しても、「国民が防衛を考える意味でも増税という選択肢は避けて通るべきではない」と述べていた。

増税を訴える政治家こそ勇気ある政治家という財務省の洗脳に見事にやられていると同時に、新たな増税で痛みを与えない限り一般庶民は防衛を真剣に考えないという実に国民を馬鹿にした発想にも冒されている。

進歩派の立場から「人権問題」に尽力したいなら、議員を辞職し、LGBT弁護士として24時間活動すればよいだろう。

日本には課題が山積している。稲田氏にはなお覚醒を期待している。私の新著『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)を稲田事務所に送るので、読んでもらえれば幸いである。

腹黒い世界の常識

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