衛藤晟一議員が一喝
LGBT利権法案は2021年6月に一度頓挫している。稲田氏と西村智奈美氏(立憲民主党)が中心となってLGBT議連がまとめた「差別は許されない」との文言を含む超党派合意案(差別の中身は定義されず)に対し、どこまで逆差別を生むか分からないと自民党内の保守派が反発し、結局棚上げとなった。
この時稲田氏は、激しく泣いたという。
山口敬之氏はこう書いている(月刊『Hanada』 、2023年8月号)。
〈稲田氏が「野党と合意してしまったから自分のメンツが立たない」と言って安倍氏の前で号泣したことについては、疑う余地はない。この件については複数の証人もいる〉
稲田氏は古屋圭司議員らに対しても泣いて訴え、衛藤晟一議員が「国のために流す涙は美しいが、その涙は一体何だ」と一喝したという。
稲田氏自身、〈保守派による私への反発は強く、反対派の中心に安倍先生がおられました〉と書いている(『アイデンティティ』、2022年12月1日号)。
LGBT利権法案頓挫から4カ月後の2021年10月、岸田新首相による衆議院解散を受け、総選挙が行われた。
当時、山口敬之氏は安倍元首相と次のような会話を交わしたという(月刊『Hanada』、2023年六月号)。
〈「ついに稲田が、LGBT法案に関する問題点がよくわかったと言ってくれたんだよね」。さらに、稲田は「もう二度とLGBT法案にはかかわらない」と明言したというのだ〉
これに対し山口氏は、「わかったふりをして、何かお願いごとでもしてくるんじゃないですか?」と疑念を口にしたという。翌日再び安倍氏から電話がかかってきた。
〈「山口君の予感はドンピシャだったよ。稲田は『LGBT問題のおかげで、地元・福井の後援会が崩壊状態なんです。助けて下さい』と言うんだよ。だから、稲田の言うとおり、地元の保守系団体の代表や幹部四人に電話をかけて支持を依頼したよ」
「稲田さんが安倍さんにそこまでお願いしたのなら、さすがにもう安倍さんを裏切れませんね」
「もう大丈夫だと思うよ」〉
しかし全く大丈夫ではなかった。安倍元首相が凶弾に倒れて重石が取れた中、稲田氏がLGBT利権法案成立に向け、野党やエマニュエル駐日米国大使らと組んで活発に動いたことは読者の知る通りである。
裏付け証言
なお、山口氏が述べる趣旨で安倍氏が福井の関係者に電話をかけたことについては、受けた側(私の知友。仮にA氏とする)の裏付け証言もある。
以下は私とA氏のメールのやり取りである。
〈一昨年の総選挙時、稲田朋美氏が安倍元首相のもとを訪れ、「保守派に落選運動をされている。助けて欲しい」と訴え、その場で安倍さんが、ともみ組関係など福井の元々の支持者4人に電話を掛け、稲田がLGBTはもうやらないと約束するなど反省しているので支持してやってくれないかと話をした、と安倍さんから直接聞いたと知り合いのジャーナリストが述べています。Aさんのところにも電話があったのではないかと思い、お聞きする次第です〉
すぐに回答が来た。
〈確かに安倍元総理からお電話を頂きました!そのような内容でした〉
いい加減な話をする人物ではない。稲田氏は、安倍首相に対しても福井の支援者に対しても、「私は今後とも、LGBT利権法実現のために邁進します。それでもよければ御支援お願いします」と正直に言うべきだったろう。