【読書亡羊】必読、対中国「政治戦」の教科書を見逃すな!  ケリー・K・ガーシャネック著、鬼塚隆志監修、壁村正照訳『中国の政治戦 -「戦わずして勝とう」とする国への対抗戦略』(五月書房新社)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


アプリやSNSが中国の工作を加速させる

とにかく読み始めると、全ページに付箋を貼る羽目になってしまうのだが、特に印象的だった部分を紹介したい。

まずは中国の目的だ。「中国にとって都合の良い世論をその国に作り出す」「アメリカとの関係に楔を打ち込み分断を図る」というのは言うまでもないが、恐ろしいのは「いつの間にかそうなっている」ように工作を仕掛けることだ。

〈重要なのは……言われなくても自分の意志で中国が望むことをするように考えてほしいのだ。これは心理操作の一形態である〉

ハミルトン氏も指摘していたことだが、こうした「心理操作」に有効なのが「中国批判は人種差別だ」と置き換える手法だ。「開明的な」アメリカの外交官たちが中国批判の講演を聞いてヒステリーを起こしかけたのも、この要素があったからだろう。

特に2012年から始まった習近平時代は、SNSやソーシャルメディアの発達と重なっている。それまではもっぱら学者や政治家など発言力のある人間に取り入って中国に都合の良い言説を拡散させていたが、ウェブを通じて他国の世論に直に影響を与えられるようになった。

もちろん、中国のネット工作の影響力は限定的で、本書ではタイにおける中国のネット工作は「投稿が稚拙で子供じみた言葉遣い」のため、さほどの影響力はないと分析されている。

しかし、元々存在する分断を刺激することはできるだろうし、それこそChatGPTを使えば言語的に不自然でない投稿をすることも可能になる。

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画

「中国版ChatGPT」の脅威

第八章では、中国による対台湾の政治戦が分析されているが、やはりソーシャルメディア環境における脅威は無視できない。すでに中国のウェブアプリであるWeChatは台湾に浸透しており、多くのユーザーを獲得している。アプリを通じて反体制者を追跡し、中国共産党の世界観に都合の悪いコメントやリンクを検閲しているという。

さらに本書によれば、2020年3月までにWeChatはコロナウイルスに関する500以上のキーワードをブラックリスト化し、コロナ用のプロパガンダキャンペーンを支援していたという。

その影響はスマホを飛び出し、WeChatを通じて中国国内外の中国人を動員し、米国やカナダなどの街頭や大学での抗議活動での動員を促しているといい、「こうした機能が台湾で使われること」についての懸念を示してもいる。

既に中国系企業が提供するアプリTicTokが個人情報を抜いていたことは広く知られている。「中国版ChatGPT」も、当然のことながら中国共産党体制を利することになるだろう。

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