尾崎豊没後31年に想うこと 生き続けることの意味|山岡鉄秀

尾崎豊没後31年に想うこと 生き続けることの意味|山岡鉄秀

尾崎豊がこの世を去ったのは1992年4月25日。尾崎と同い年の私も偏差値に偏重する無味乾燥な管理教育に辟易としていたが、当時の私は、人のバイクを盗んで暴走したり、夜の校舎の窓ガラスを壊して回ったりするのは馬鹿げたことだと思っていた――。(サムネイルはアルバム『ALL TIME BEST』)


表現は違っても、あのころ、3人は同じような気持ちを抱いて生きていた、異端だった。

最も平凡な私は大学でもバブル期の学生生活を送ることもなく、奇人変人ばかり集まる弁論部に自分の居場所を見つけていた。弁論大会で優勝したこともあったが、地味な学生生活だった。

そのころ、尾崎はスランプに陥り、曲が書けず、無期限活動停止を宣言する。単独渡米するも収穫ないままに帰国し、新しいアルバムも出せず、新曲の発売がないまま始めたライブツアーは体力が持たずに途中でキャンセルとなった。

そして1987年12月22日、ついには覚醒剤取締法違反で逮捕されてしまう。警察に通報したのは父親だった。尾崎は1988年2月22日まで東京拘置所で過ごす。裁判では懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決が下った。

終焉と出立のコントラスト

そのころ大学を卒業しつつあった私はすぐにでも海外に飛び出したかったのだが、親に心配をかける気にならず、米系石油会社に就職した。自らが嫌悪した大人になるにつれ、必死にあがく尾崎とは対照的に、私は平凡な道を漫然と歩み続けていた。

しかし、社会人生活を経て私は再度「このままでは日本は必ず没落する」と確信する。そう考えた理由は、日本人はかつて私が失望した教育のなせる業なのか、ひたすら成功した前例を踏襲するばかりで、状況の変化に自発的に対応する発想が乏しすぎると感じたからだ。

やがてバブル経済が崩壊したが、大半の日本国民はしばらく実感を持てず、伝説のディスコ「ジュリアナ東京」を始めとする高級ディスコでダンスに興じていた。

私はついに日本を飛び出す決意を固める。いったん日本の外に出て、勉強も仕事もやり直してみようと思った。シドニー大学大学院への留学を決め、シドニー行の飛行機に飛び乗った。1992年4月19日のことだった。そしてその6日後の4月25日、尾崎は突然、この世を去った。

早朝、民家の軒先に全裸で傷だらけで倒れていた尾崎は昼過ぎに病院で他界した。あまりにも謎めいた死だった。日本社会への失望を共有していたかもしれないが、私が新しい人生に踏み出したのと同時に、天才シンガーソングライター尾崎は数々の名曲を残してこの世を去ってしまった。

そして、その翌年の1993年に石井は前述のようにアメリカへと旅立って行った。不思議な人生の交差点であり、終焉と出立のコントラストだった。

阪神・淡路大震災発生を機に、妻の久美子と帰国すると石井は、1997年12月、調布市つつじヶ丘にてカフェ「KICK BACK CAFE」を設立(後に仙川に移転)。カフェ内で高卒認定資格が取得出来る、フリースクール「コミティッド・アカデミー」を経営しながら、牧師としての活動も続ける。

2000年、処女作である『この人と結婚していいの?』(新潮社)が20万部を超えるベストセラーになる。そして2012年10月、三味線、尺八や琴と洋楽器を組み合わせたバンド「HEVENESE」のリーダー&ツインリードボーカルとして、シーラ・Eが⽴ち上げたStilettoflats Musicより世界デビューして今日に至る。

関連する投稿


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法の早期施行を法務省に働きかけてきた。しかしながら、改正入管法成立前から私に対する事実無根の攻撃が始まった――。


硫黄島をはじめ多くのご英霊の力で、今の日本がある|和田政宗

硫黄島をはじめ多くのご英霊の力で、今の日本がある|和田政宗

先の大戦有数の大激戦である硫黄島の戦いで、日米両軍合わせて2万9千人が亡くなった。今回の訪問で、硫黄島で戦った方々がどのような状況で、どのような思いで戦ったのかを、まざまざと知ることができた。


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか?  ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか? ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)


【今週のサンモニ】社会を説教するが具体策は何もなし|藤原かずえ

【今週のサンモニ】社会を説教するが具体策は何もなし|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

川勝知事が辞任し、突如、終幕を迎えた川勝劇場。 知事の功績ゼロの川勝氏が、静岡に残した「負の遺産」――。


【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。