尾崎豊没後31年に想うこと 生き続けることの意味|山岡鉄秀

尾崎豊没後31年に想うこと 生き続けることの意味|山岡鉄秀

尾崎豊がこの世を去ったのは1992年4月25日。尾崎と同い年の私も偏差値に偏重する無味乾燥な管理教育に辟易としていたが、当時の私は、人のバイクを盗んで暴走したり、夜の校舎の窓ガラスを壊して回ったりするのは馬鹿げたことだと思っていた――。(サムネイルはアルバム『ALL TIME BEST』)


「卒業」

人は誰も縛られた かよわき子羊ならば
先生あなたは かよわき大人の代弁者なのか

「15の夜」

盗んだバイクで走り出す 行き先も解らぬまま 暗い夜の帳りの中へ
誰にも縛られたくないと 逃げ込んだこの夜に 自由になれた気がした 15の夜

しかし、やりきれない虚しさは同じで、高校を中退してシンガーソングライターとしての才能を遺憾なく発揮し、若者のカリスマと化して行く尾崎を横目に、私は受験勉強の在り方にも強い疑問を感じて集中できず、裕福でもなかったので、当時の成績で無試験で入れてくれる大学に入学した。

この時点で尾崎と自分の接点は日本社会への絶望だったが、当時、尾崎へのシンパシーや憧れはなかった。

同い年でやはり悪戦苦闘している男がいた

一方、早生まれで学年はひとつ上だが、同い年でやはり悪戦苦闘している男がいた。作家、結婚カウンセラー、牧師、フリースクール校長、実業家、ミュージシャンなど多彩な肩書を持ち、HEAVENESEというバンドのリーダーを務める石井希尚(まれひさ)だ。乃木希典を尊敬する父親が希尚と名付けた。

東京都世田谷区出身。明星学園小学校、明星学園中学校・高等学校に在学していた石井は音楽一家に育ち、やはり裕福なバックグラウンドを持つ。明星学園といえば、「個性尊重、点数のない教育」の自由な校風で知られていたが、その明星学園が点数重視の受験体制に移行したことに石井は激しく反発した。

尾崎のような不良ではないが、体制に抵抗する激しさは共通している。友人らの退学処分を見直させるために、デモやハンストまで行い、教育の根本を問いただす運動を展開した。

石井の性格を象徴するエピソードがある。制服もなく、服装を定める校則もないはずの明星学園高等部で、1人の級友が退学勧告を受けた。その男子生徒は、リーゼントで剃りこみを入れていたのが不適切と見なされたのだ。

規則がないはずなのに規則違反と見なすことを理不尽と感じた石井は、級友たちを誘って猛然と学校側に処分の見直しを求める運動を開始する。集会を開き、デモ隊を組織した石井はついに校長室に乗り込み、校長に向かってこう叫んだ。

「校長、こいつの目をみてやってください! こいつが悪い奴だと思いますか?」

校長はリーゼントの生徒の目を見ると、「思わない」と答えた。しかし、退学処分の決定は覆らなかった。その男子生徒は暴走族にも入っていたので、不良とみなされ、救えなかった。

絶望した石井は自主退学を決める。そして石井は尾崎と同じように、偽善的教育者を憎み、社会への怒りと復讐心を音楽にぶつけた。本人の言葉で表現すれば、反社会的な情熱の塊だった。俳優の内田良平から詩を渡され、作曲依頼を受けたこともあった。

「ゴキブリ」という曲名でライブハウスのコンテストで優勝した。

関連する投稿


進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

かつての自衛隊員の隊舎といえば、和式トイレに扇風機、プライバシーに配慮がない部屋配置といった「昭和スタイル」の名残が色濃く残っていた。だが今、そのイメージは大きく変わろうとしている。兵庫県伊丹市にある千僧駐屯地(せんぞちゅうとんち)を取材した。


変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。今回は変わりつつある現場を取材した。


終戦80年に思うこと「私は『南京事件』との呼称も使わない」|和田政宗

終戦80年に思うこと「私は『南京事件』との呼称も使わない」|和田政宗

戦後80年にあたり、自虐史観に基づいた“日本は加害者である”との番組や報道が各メディアでは繰り広げられている。東京裁判や“南京大虐殺”肯定派は、おびただしい数の南京市民が日本軍に虐殺されたと言う。しかし、南京戦において日本軍は意図的に住民を殺害したとの記述は公文書に存在しない――。


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

「ある意味、地獄が待ってます」退職自衛官を苦しめる若年給付金の返納ルール|小笠原理恵

ある駐屯地で合言葉のように使われている言葉があるという。「また小笠原理恵に書かれるぞ!」。「書くな!」と恫喝されても、「自衛隊の悪口を言っている」などと誹謗中傷されても、私は、自衛隊の処遇改善を訴え続ける!


最新の投稿


【今週のサンモニ】低次元な高市新総裁批判|藤原かずえ

【今週のサンモニ】低次元な高市新総裁批判|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】ウイグルに潜入したら見えてきた「中国の本当の姿」とは  西谷格『一九八四+四〇――ウイグル潜行』(小学館)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウイグルに潜入したら見えてきた「中国の本当の姿」とは 西谷格『一九八四+四〇――ウイグル潜行』(小学館)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「ドバイ案件」の黒い噂|なべやかん

「ドバイ案件」の黒い噂|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!信じるか信じないかは、あなた次第!


【今週のサンモニ】ステマまがいの偏向報道番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】ステマまがいの偏向報道番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


チャーリー・カーク暗殺と左翼の正体|掛谷英紀

チャーリー・カーク暗殺と左翼の正体|掛谷英紀

日本のメディアは「チャーリー・カーク」を正しく伝えていない。カーク暗殺のあと、左翼たちの正体が露わになる事態が相次いでいるが、それも日本では全く報じられない。「米国の分断」との安易な解釈では絶対にわからない「チャーリー・カーク」現象の本質。