バイデン氏は議場の共和党議員に向かって、「中国との競争に勝利するため、我々すべてが団結せねばならない」と語りかけた。ところが演説の半ば以降、共和党を繰り返し名指しで非難した。一般教書演説では異例のことだが、共和党席からは「嘘をつくな」という激しいやじが飛んだ。マッカーシー下院議長(共和)も、首を振り、不快感をあらわにする場面があった。
バイデン大統領は、自身の再選出馬に民主党左派の支持を得るため、共和党との関係悪化を承知の上で、あえて露骨に党派的な発言を行ったのではないか。これでは団結どころか分断がますます進むだろう。
核ミサイル開発を加速させ、日本人拉致を含む人権蹂躙を続ける北朝鮮に演説で一言も触れなかったのも、大いなる懸念材料である。(2023.02.13国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
福井県立大学教授、国家基本問題研究所評議員・企画委員、拉致被害者を救う会全国協議会副会長。1957年大阪府生まれ。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。著書に『アメリカ・北朝鮮抗争史』など多数。