米国上空に飛来した中国の偵察バルーン(気球)を米空軍はF22戦闘機で撃墜した。同様な領空侵犯が日本でも起きた場合の法整備は遅れている。
自衛隊法84条の領空侵犯に対する措置には、侵犯機を「着陸させる」か領空外に「退去させる」の2選択肢しかなく、撃墜する権限は明示されていない。82条の3に弾道ミサイル等に対する破壊措置規定があるが、落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる場合だけと規定されており、バルーンの場合に適用できるか判断の分かれるところだ。明確な法律の規定を国家は定めておくべきである。
「民間バルーンが誤って侵入」は大嘘
中国側は問題のバルーンについて、「民間の気象研究用で不可抗力により米国上空に誤って入った」と説明している。回収される残骸の分析でいずれ真相が明らかになるであろうが、これは大嘘だ。
バルーンは米国上空だけでなく、同時期に中南米のコスタリカやコロンビアでも発見された。また昨年1月にインドのアンダマン・ニコバル諸島上空で、同2月にハワイ沖で、3年前の6月に日本の東北地方でも観測された。これら全てが不可抗力であるはずがない。偵察の意図を持って飛行させているのは明白である。
民間が行っているというのも嘘で、情報や宇宙を統括する人民解放軍戦略支援部隊が指令していることに間違いなかろう。
対象国の偵察衛星がいつどこを通過するかは全て把握されており、通過域にいる艦艇等の部隊は、通過時間帯に電波封止をして情報を取られないように対策を講じている。バルーンの飛行は、そうした偵察衛星の欠点を補うためであろう。