安倍元総理の国葬と「台湾有事は日本有事」
安倍晋三元総理の国葬が27日に行われる。国葬について様々な意見が出ているが、なぜ国葬を行うのかの説明はただ一点のみであると私は思う。それは、民主主義の根幹である選挙活動中の元総理大臣をテロで殺害するという暴挙から、民主主義を守るために我が国は国葬を行うということである。
これは自民系の元総理であっても民主系の元総理であっても変わらないことと思う。国葬は日本の民主主義を守るための闘いである。もし、テロの凶弾に倒れた元総理のための国葬を行わないのであれば、日本は民主主義が未熟であると各国も思うであろう。しっかりと国葬を行うことは民主主義を守る国の責務である。
安倍元総理はなぜ今年に入り活動を再び活発化させていたか。
それは、台湾有事への危機感であったと私は思う。安倍元総理は「台湾有事は日本有事」と繰り返し訴えていたし、今年3月には蔡英文台湾総統とリモートでの会談も行った。中国の脅威は高まっており、中国を抑止するための施策の実現に安倍元総理は邁進していた。敵基地反撃能力の整備もそうであるし、長距離スタンドオフミサイルの開発・配備もそうであった。
29日は日中国交正常化50年にあたるが、とても祝賀行事を行うような状況ではない。これは我が国を真に守ろうと考えている人なら常識的な考えである。
国交正常化50年にあたり、国交正常化交渉時のことを振り返るインタビューがメディアで取り上げられているが、当時の大平正芳外務大臣が「中国は低姿勢だったが、50年たったら態度はガラッと変わる。大きく経済発展して日本を見下すようになるよ」と言っていたと、森田一元外務大臣秘書官が時事通信などに答えている。
まさに、大平外相が言った通りの状況になったわけであり、この50年間、日本はもっと中国に対し手を打つべきであった。
世界各国の首脳に嘘を吹き込む習近平
中国がウイグルやチベット、モンゴルで行ってきたことは何か。
自主独立を願っている民族の土地を侵略し、虐殺してきた。米国等がトランプ政権以後、厳しい姿勢に転じたが、日本は「深刻な懸念」を表明するに留まっている。今この時間も弾圧を受け、失われている命がある。我が国の先人たちはアジアの諸民族の独立と解放のために先の大戦を戦った。
今だアジアにおいて独立と解放を果たせていない民族があるのであれば、我々は身を賭してそうした民族の自主独立の動きを支えていかなくてはならない。中国に対し、侵略、弾圧、虐殺をやめさせるため、我が国は経済制裁をはじめ、もっと強く行動すべきだ。
こうした主張をすると、二国間の関係がおかしくなる、外交交渉において礼儀は重んじるべきであると言う人もいるが、習近平国家主席自らが世界各国の首脳に日本に対する嘘を吹き込んでおり、礼を失しているのは中国のほうである。
さらに、日中友好50周年を翌月に控える先月4日には、中国が弾道ミサイル5発を我が国の排他的経済水域(EEZ)内に打ち込んだ。これらは台湾を超え日本の近海に打ち込まれており、南西諸島攻撃を想定したものであることは明らかである。
史上初めての事態に、速やかに国家安全保障会議(NSC)が開かれるものと思っていたが、岸田総理はNSCの招集も行わなかった。中国の戦略は「サラミスライス戦略」であり、徐々に相手の領域に切り込んでくる。だからこそ即座に断固たる対処が必要であったがこれもなされていない。