「日本の弔い方」を見せてやれ
日本では近年、葬式の簡素化や墓じまいなどが話題になり続けてきた。「死んだらおしまいなのだから、旅立ちの儀式である葬式や、その後の墓にお金や神経を使う必要はない」ということなのだろう。
「金がもったいない」というデフレマインドもある。かつてのように、「死者が悲しむ」とか「怨念となる」というような、畏れの気持ちも消失しつつあり、お盆という習慣も単に「大型連休」程度の扱いになっている。
これも近代化・現代化の一つの現象だと言われればそうなのかもしれないが、本書を読むと、盛大に死者をあの世に送り出したり、年に一度戻ってくる魂を温かく迎えたりする宗教や習俗がある方が、「安心して死ねる」ようにも思う。
もちろん安倍元総理の「葬儀」はすでに家族葬の形で終了しているので、国葬がどんな形であろうとご本人の魂の行く先にはあまり関係がなさそうだ。しかし世界から弔問客が来るのなら、ある程度のコストがかかっても「日本の弔いというのはこういう形なのだ」というものを見せてもいいように思う。
それでも宗教色を排すというなら、いっそ、日本の技術力・テクノロジー面を強調し、「ホログラム安倍晋三」を出現させ、参列者を出迎えたらどうかとさえ思うのだ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。