【読書亡羊】「安倍を鳥葬にしろ」と蔑んだ町山智浩さんにおすすめの一冊 ジュリエット・カズ著、吉田良子訳『葬儀!』(柏書房)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


「鳥葬」の意味を知っていますか

ツイッター上では映画評論家の町山智浩氏が「安倍を国葬にするなら鳥葬で手を打とう」という主旨の書き込みをして非難を浴びた。明らかに否定的な意味で鳥葬を持ち出したからだ。

本書でも鳥葬はチベットの伝統的な弔いのあり方として紹介されている。最新の研究では一万年以上前から行われていたという鳥葬が、いつ頃からチベットで始まったか定かではないが、チベット人にとっては重要な文化であり、習俗であり、宗教的儀式だ。

鳥葬は単に遺体を野ざらしにして鳥(ハゲワシ)についばませるのではなく、専門の鳥葬師が手順に則って遺体を切断し、その肉片とチベットの主食である大豆を炒った粉を混ぜ合わせるのだという。

〈最後に我が身を自然に捧げることで、死者は完全にこの世を離れて転生する〉という神聖な意味を持つにもかかわらず、珍しいもの、えぐいもの見たさの観光客の好機の目にさらされても来た。現在、鳥葬の現場にはチベット人以外は近寄れないようにしているという。

他者の文化、弔いの形への理解が足りないと、人を貶めるために「鳥葬」を持ち出すという愚かな行動に至ってしまう。「安倍元総理に、再びこの世に転生してほしい」と思ったわけではないだろうから、ぜひ町山氏には本書を読んでもらいたい。

ちなみに「鳥葬」は「天葬」とも呼ばれているという。

「故人ロボ」に人は感動するのか

本書には日本の事例も紹介されている。もちろん「四十九日」や「湯灌」など、なじみのある説明はあるのだが、それと合わせて葬儀とテクノロジーとの融合事例が取り上げられている。

例えば「デジタルシャーマンプロジェクト」。「故人」となってから四十九日間、故人の顔や口調を覚えさせたロボットが稼働し続け、死者の魂を感じさせるのだという。本書によればこのプロジェクトがヨーロッパで紹介された時、〈あまり共感は得られませんでした〉とのことだが、日本人でも共感する人は少ないのではないか。

しかし一方で、東日本大震災後に設置された「風の電話」は大きな反響を呼んだ。「震災で亡くなった死者と電話をして悲しみを癒す」という試みを、実に25000人以上が実施したという。

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