インターネットや「折り入って作戦」の他に、『手引き』で目を引いたのは候補者選定についてだ。
「いちはやく候補者を決定する」との見出しの項では「候補者の選考は、党機関と支部がよく相談してすすめることが大事です」と一般的な普通のことも書かれているが、その直後に次のことが書かれている。
「とくに社会的道義と市民道徳、品性などを重視し、党の候補者・議員としてふさわしいか、集団的に検討することが重要です」
「最近一部で、(略)品性や生活状況をよく知らないまま候補者にし、当選後に支部や党機関、議員団との団結上の問題が生じ離党に至る例や、私生活上の深刻な問題が発覚し議員辞職、除籍になった例も生まれています」 。
こうした警告は以前の『手引き』はなかった。近年、共産党の現職地方議員や元議員候補者によるわいせつ事件やパワハラ問題が多発していることの反映だろう。
しかし、それでも〝身体検査〟をすり抜ける者が出てくるのは防ぎようがない。
今回の統一地方選挙でも、同僚議員へのパワハラが原因で党公認を取り消された現職市議もいる。
『手引き』で「ふさわしくない」とされるような人物が公認を取り消されることなくそのまま立候補するケースもある。東京・杉並区では、過去の自転車窃盗や、小学生の息子に自身の女性器を見せて感想を言わせるなど行為をツイッターに投稿していた女性が共産党公認の区議会議員候補になっている。自分の子どもであっても性器を見せつける行為は強制わいせつであり、また児童虐待でもある。この候補者についてはすでに物議をかもしているのだが、仮に当選してしまえば、さらに炎上することは必至だ。
ネット活用にしても候補者選定にしても、共産党の『選挙活動の手引き』には、いまの共産党にはできないことばかりが書かれている。これでどんな選挙結果になるのか、志位和夫委員長の責任の取り方とともに注目していきたい。
1964年、東京都生まれ。共産党本部に勤務後、板橋区議を4期16年務めたが、共産党に除籍される。著書に『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)。