『手引き』に掲載された「主なSNSの種類と特徴」をみると、たとえばこんな説明がある。
「●LINE(ライン)・国内利用者数 9200万人。・支持拡大や『折り入って作戦』で使うと効果的。・日本で利用者数が最も多く、全世代が利用し、現在では、文章の送受信だけでなく、音声通話やビデオ通話も可能。多くの人が連絡・コミュニケーションの手段として活用。家族や職場、学校のクラス、地元、趣味仲間との連絡など、つながっている人の結びつきが強い」。
「折り入って作戦」とは共産党独自の用語で、党員がつながりのある人物に対して「じつは折り入ってお願いがあるのですが……」と話を切りだし、共産党への支持をお願いする行動のことだ。
共産党員には、自分が党員であることを、親しい友人・知人にも告げていない者も多い。これまでの選挙では、自分の名前を名乗らず「共産党〇〇事務所ですが……」と電話をかけることが多かった。しかし、匿名では昔も今も票には結びつきにくかった。そこで個人同士のつながりを効果的に支持拡大に生かせるようにしたのが「折り入って作戦」である。しかし同時にそれは、党員たちに「自分の正体を世間にさらせ」という党中央の上からの命令でもある。共産党員であることを告白したことをきっかけに友人が遠のいていくことも覚悟しなければならない。
党外の一般の人から見てもビックリするようなことが起きるかもしれない。自分のLINE友だちの中に、共産党員がいた場合、ある日突然「折り入ってお願いがあります」などと共産党への支持依頼のメッセージが送られてくることになるからだ。電話での支持依頼ならガチャンと電話を切れば済む話だが、付き合いのある者からのLINEでは既読スルーもしづらいだろう。
個人情報を党勢拡大に流用
LINEかどうかは不明だが、共産党員が個人情報を党勢拡大に流用していたことが問題になっている。
昨年10月21日、ローカル紙「神奈川新聞」が「横浜の集会参加者4人の個人情報 共産党関係者が不正流用」と報じている。
記事によると「横浜市内の小学校の統廃合を考える集会に参加した保護者や地域住民の個人情報を、共産党の関係者が不正流用していた」という。
会場で新型コロナウイルス感染者が出た場合に連絡が取れるよう、参加者全員に氏名、電話番号、住所を記載してもらっていたが、その4人の個人情報を、集会の主催者メンバーでもある共産党員が書き写し、別の党員がこのメモを元に4人の自宅を訪問、集会の記事を掲載した党機関紙「しんぶん赤旗」を手渡した。これも「折り入って作戦」なのである。
主催団体は当該党員を退会させた上、個人情報保護法に抵触する可能性があるとして関係者に謝罪している。
集会に参加し、訪問を受けた男性は「(不正流用され)保護者の間で『怖い』という声が上がっており、今後会合から足が遠のくことを心配している。党のコンプライアンスの問題で調査と再発防止策を求めたい」と話している。
この不正についての日本共産党神奈川県委員会からのコメントは発表されていないが、『手引き』には「『個人情報』の取り扱いについての注意」という記載がある。そこでは「政党は、報道機関や学術研究、宗教活動などともに『個人情報保護法』の適用除外となってはいます」と前置きされた上で、「(個人情報の)取り扱いや管理には十分注意を払う必要があります。署名運動などで得た『名簿』を本人の了承を得ないで選挙活動に使用したり、第三者に提供することなどがないようにしなければなりません」という。
だが政党のすることは「違法ではない」と前置きされた注意ではどれだけ効き目があるだろうか? 横浜の事例は、手に入れた名簿はなんでも選挙や党勢拡大に使えという「折り入って作戦」の本質を示している。